請負事業主が講ずべき措置等について (請負シリーズ30)

◆業務請負へ「業態転換」の動き
 昨年勃発した世界同時不況以降、わが国内企業の大幅減産に伴う「派遣切り」により、未曾有の非正規労働失業者となることが懸念されている中、自動車及び電機大手メーカーを筆頭に次々と“製造派遣ゼロ方針”が打ち出され、人材派遣会社各社も業務請負等への「業態転換」を図る動きがメディア報道されました。
◆「業態転換」は今後の増産の備え
 この世界同時不況は少なくとも今年中は続くものと予測されていますが、突然の「派遣切り」に遭遇し、仕事と住居を同時に喪失した非正規労働失業者は、再就職先には「派遣労働」を望んでいないのが本音と推測します。不況収束時期はまだ確定できませんが、後に企業が増産態勢に臨むことになって「派遣」に依存しない方針を採るならば、他の業態を選択して労働力を補填しなければならなくなります。ただ、世界同時不況は現在進行中ですから、業務請負に転換すると言っても即時でないのは言うまでもありません。
◆請負労働者の「雇止め」は現在約1.3万人
 ここで、昨年の世界金融危機以降、厚労省が定期公表している非正規労働者の削減実態調査結果(第4回:2/18時点)※1)を見ると、「請負労働者の削減人数は1万2,988人」で、対総削減人数の占率は8.2%と低いものの、昨年の「第1回(11/25時点)」調査以降、総削減数の増加に比例して、請負労働者削減数もこの4ヶ月間で約4倍に増加しました。熟練した技術者等の請負労働者には雇用期限制約が無いというメリットがあるにもかかわらず、派遣労働者と同様に「雇止め」となっているのが現状です。
◆「製造請負」の現状課題
 この大量「派遣切り」の後、「業態転換」を図るという企業方針を冒頭に紹介しましたが、製造請負事業において課題が無い訳ではありません。「製造業の請負事業の雇用管理の改善及び適正化の促進に向けた取組について(厚労省)」※2)によると、《雇用契約が短期で繰り返される等労働条件、処遇その他雇用管理が必ずしも十分でなく、技術・技能が蓄積されないといった現状や、労働関係法令が徹底されていないといった現状があり、これらの改善が課題となっている》と指摘されています。さらにその取組みに伴い、「請負事業主が講ずべき措置に関するガイドライン」では請負事業主に対して、雇用契約を《できるだけ長期のものにし、又は期間の定めのない雇用契約とすること》、また、《請負業務に従事させることができない期間が生じた場合についても、当該期間中教育訓練を実施する等により雇用契約を継続すること》等が明示されています。
◆希求されるのは「請負の本質」
 つまり、当該「ガイドライン」は請負事業主の講ずべき措置を明示しており、請負労働者の安定的な雇用関係確保に止どまらず、請負事業主に求めてられている措置において、とくに次の2点は肝要と考えます。それは、(a)請負労働者が、より高度な知識や技能を必要する職務又はより高度な責任を負う職務への転換を希望する場合、これが可能となる制度の導入、必要な条件の整備等をすること。また、(b)労働者の職業生活設計に即した自発的な職業能力の開発及び向上を促進するために事業主が講ずる措置に関する指針(平成13年厚生労働省告示第296号)に則り、諸々の「必要な援助」を行うことが必要とされています。即ち、請負労働者にとって、より高度な知識や技術・技能等の熟練・習得こそ「請負の本質」そのものです。今後、冒頭に挙げた企業の「業態転換」で、請負労働者には「請負の本質」が希求されますので、請負事業主の責務はより一層重要になるものと考えます。
※2)職発第0629001号、平成19年6月29日付:厚生労働省職業安定局。
参考:※1)「非正規労働者の雇止め等の状況について(2月報告:速報2/18時点)」平成21年2月27日付厚生労働省職業安定局公表資料。