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2008.06.04

製造業における請負労働者の総合的安全衛生管理        (請負シリーズ16)

◆請負現場は「混成・混在職場」
 混成職場とは、正規従業員と有期労働契約で雇用される非正規従業員が、ひとつの企業において役割を分担しながら混然となって働く事業場をいいます。つまり、労働者の雇用形態と就労形態の多様化により、非正規従業員数は対全雇用者で約3割(平成18年労働力調査)を占めてからは増加傾向(平成20年1~3月期基本集計結果)で、パート・アルバイト、嘱託、契約社員、派遣、業務請負、勤務地限定、在宅勤務等で構成されます。また、請負事業者の大半は、受入事業場直用の労働者と同じ建屋で就業(約76%がラインで一緒に就業)しており、約47%の事業場において請負事業者が入っているラインに複数の構内下請事業者の労働者が一緒に就業しているという結果※1)です。即ち、請負事業者が就業する事業場は「混成・混在した職場」と言えます。
◆請負事業者が占めるのは主に「機械関連製造業」
 製造業の請負労働者数推移(事業所・企業統計調査:総務省)をみると、平成16年は81万2,060人で、平成8年(48万9,234人)の約1.7倍に増加しています。請負労働者がいる事業所を詳しくみると※2)、産業・事業所規模では、(1)情報通信業(41.1%)につぎ、(2)製造業(30.7%)が第2位で、製造業のうち500人以上規模が59.9%を占めています。さらに、製造業の中分類では、「機械関連製造業」が38.6%と一番多く、製造業全体と同様に500人以上規模が82.0%を占めています。その内、物の製造を行う請負労働者の占率も、数値の大小はありますが、同様の占率傾向を示しています。では、物の製造を行う請負労働者の実数はどうかというと、規模別では100人~499人規模の現場が約43.9万人で製造業の約過半(50.7%)を占め、中分類では「機械関連製造業」が約51.4万人(59.4%)で最大の占率です。
◆総合的安全衛生管理のための「指針」策定
 このように、「混成・混在職場」の機械関連製造業を中心に就業する請負労働者において、請負労働者の労働災害発生率が、元方事業者※3)のそれと比較して高い結果が出ている※4)ことから、「労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)等の一部を改正する法律(平成17年法律第108号)」が施行(平成18年4月1日)されました。これに伴い、「混在職場」全体にわたる総合的な安全衛生管理を確立するため、「製造業における元方事業者による総合的な安全衛生管理のための指針(平成18年8月1日)」※5)が策定されました。
◆「指針」は使用者及び請負人両者を対象
 当指針は、使用者にあたる「元方事業者の安全配慮義務(12項目)」を主としていますが、関連項目については「関係請負人が実施すべき事項(9項目)」を規定し、原則的に両者を対象としています。以下に要点を記します。
 目的は、混在職場における混在作業による労働災害を防止するためで、元方事業者に作業間の連絡・調整等の実施を義務付けています(労働安全衛生法第30条の2)。とくに、「物の製造を行う請負労働者数が100人以上いる職場」は、前記の分布率傾向と同様、機械関連製造業が最も多く占めている(22.4%)ので、作業間の連絡調整等を図るには「統括管理者(一つの場所で常時50人以上の労働者が作業する場合)」を選任しなければなりません。加えて、安全衛生に関する計画を作成し、関係請負人への周知も実施しなければなりません。
 具体的な作業間の連絡調整とは、(1)関係請負人の作業についての段取りの把握、(2)混在作業による労働災害を防止するための段取りの調整、(3)調整後の段取りの関係請負人への指示です。この連絡調整を実施するため、関係請負人との協議を行う場(協議会)を設置し、関係請負人が交替したとき等を含め協議会を定期的に開催し、協議結果を使用する労働者に周知しなければなりません。その他、作業場所の巡視や関係請負人の安全衛生責任者及び安全管理者等の選任も把握しておかなければならない等々が策定されています。
 このように、作業管理から健康管理にわたる安全衛生に係る総合的な管理は、元方事業者と関係請負人との良好な連携で成り立つのですが、請負労働者の就業事業場が混在職場であるが故に、その業務連携の中においてこそ、指揮命令を明確にした「適正な請負」環境の整備を大前提に取り組んでいただきたいと考えます。
※1)「製造業務における派遣労働者に係る安全衛生の実態に関する調査研究」実施に伴うアンケート調査(派遣元500事業所及び派遣先3,000事業所)・ヒアリング調査(派遣元6事業所及び派遣先12事業所)及び「職場における業務請負に係る安全衛生管理の実態に関する調査報告書」中央労働災害防止協会。
※3)一の場所において行う事業の仕事の一部を請負人に請け負わせているものをいいます。なお、仕事の一部を請け負わせる契約が複数ある場合(2次下請等)については、最も先次の請負契約における仕事を注文した者がこれに該当します。
※4)当ブログ記事:「労災発生状況と関係指針等の認知を」ご参照。
参考:※2)「平成16年『派遣労働者実態調査』統計調査別公表データ」厚生労働省。※5)「『製造業における元方事業者による総合的な安全衛生管理のための指針』のポイント」厚生労働省資料。「混成職場の人事管理と法律知識Q&A(産労総合研究所編)」経営書院。