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2008.05.23

請負の完成は偽装請負対策とは異なる (請負シリーズ14)

◆契約と現実が異なる「請負実態」
 偽装請負や偽装委託の社会問題化に伴い、偽装請負対策をすれば、請負が完成すると考えている会社が散見されます。請負契約や業務委託契約を形式的に締結していても、実際は、請負事業者が請負事業としての独立した業務に従事せず、注文先の指揮命令に従って注文先の業務に従事している現実があるのです。従って、偽装請負対策では請負にならず、「雇用と使用が一致」していなければ請負と言えません。
◆問われるのは「請負能力」
 当ブログ記事:「『告示第37号』は請負の目安に過ぎません」でご紹介のとおり、所謂、「告示第37号」は、「請負の区分基準」とも言われ、具体的判断基準も示していますが、あくまでも請負の目安に過ぎません。と言うのは、「請負事業者がその請負業務を処理することができるだけの技術的な能力や経験があることや、その労働者に請負業務を適切に行わせることができるだけの管理能力や人材養成能力があることが重要である(木村大樹氏)」と、請負事業者自身の能力が問われているからです。従って、「告示第37号」が満点でも請負にはならないのです。
◆「請負ガイドライン」に規定
 そこで「請負事業主が講ずべき措置に関するガイドライン」※1)を見ると、次のとおり規定(一部抜粋)しています。
第一は「事業所責任者の選任」で、①請負事業主は、発注者の事業所ごとに、自己の雇用する労働者(個人事業主本人及び法人事業主の役員を含む)の中から、請負労働者100人につき1名以上の事業所責任者を選任すること。②請負事業主の事業所ごとに事業所責任者を2人以上選任する場合は、そのうち1人を統括事業所責任者(請負契約の締結又は変更に関する事項を行う)とし、事業所責任者の業務を統括させること。③事業所責任者を選任した場合には、その氏名、役職及び請負契約の締結又は変更に関し与えられた権限の範囲を発注者に通知することです。
第二は「工程管理等責任者の選任」で、①工程管理等責任者は、前者①と同様の基準で選任し、②事業所責任者の兼任が可能です。また、③一つの業務のまとまりについて工程管理等責任者を2人以上選任する場合は、そのうち1人を統括工程管理等責任者とし、工程管理等責任者の業務を統括させることが必要です。
◆完成は「請負実態の存在」
 つまり、派遣先責任者に一任してしまっていることが本来筋違いで、言わば、「名ばかり請負」という労働者派遣にほかなりません。前記の事業所責任者をきちんと選任する等の法令遵守は、請負事業者の就業体制を整備することに直結しています。従って、請負を完成するためには、請負の原点に立脚し、ゼロから請負を構想する方が早いと考えられます。請負事業者や請負事業者を活用する事業所においては、少なくとも請負の「自主点検項目」に従い、その各要件を完璧に満たしていることが最低条件であり、その検証のうえに立って、「請負の実態が伴って存在している」ことが、請負完成のための肝心な要素と考えます。
※1)「製造業の請負事業の雇用管理の改善及び適正化の促進に取り組む請負事業主が講ずべき措置に関するガイドライン(平成19年6月29日付)」厚生労働省職業安定局公表資料。
参考:「労働者派遣・業務請負の就業管理―偽装請負問題への対応と適正な受入れのための法律知識―(木村大樹著)」社)全国労働基準関係団体連合会。「業務請負・労働者派遣の安全衛生管理(木村大樹著)」中央労働災害防止協会。「人事・労務管理シリーズⅥ―労働者派遣編―派遣を使う、活かす。ここがポイント(全国労働基準関係団体連合会編著)」労働調査会。