請負労働者の育成環境確保の必要性 (請負シリーズ23)

◆「人材ニーズ」の変化と高度化
 「ものづくり白書(平成19年度ものづくり基盤技術の振興施策報告書)」※1)によると、ものづくり現場の経営課題として、(1)国際競争等の下で「高品質・精度」、「短納期」、「価格競争」が最重視されて人材ニーズが変化・高度化したこと、また、(2)派遣労働者の増加等就業形態が多様化し、専門性・変化への対応が求められ、製品自体の質を左右する分野にも従事するようになったことが挙げられています。これを受け、非正規労働者の職業能力開発機会は正社員と比較的し不足している為、教育訓練や技能の底上げ、キャリア展望の明確化が必要とされています。
◆「ものづくり施策」の一環
 当該施策では、ものづくり労働者の確保等に関し、失業の予防その他雇用の安定を図る為、若年者を対象とした企業における実習訓練及び教育訓練機関における座学(日本版デュアルシステム)の導入が促進されました。また、職業能力の開発及び向上に関しては、離転職者に対する職業訓練や従業員の教育訓練に積極的に取り組む企業については、教育訓練費用の一定割合を法人税額から控除するという「人材投資促進税制」の措置が講じられています。
◆請負事業主による援助が必要
 ものづくりを誇るわが国では、これまで製造業の請負事業において、技術・技能が蓄積されないといった現状等を踏まえ、「製造業の請負事業の雇用管理の改善及び適正化の促進に取り組む請負事業主が講ずべき措置に関するガイドライン」※2)が策定されました。この「請負ガイドライン」は、請負労働者の希望に応じた職務経験の機会を付与し、その内容や実績の適正評価・蓄積の処遇向上への活用、キャリアパスの明示、自発的な職業能力の開発及び向上を促進する教育訓練等の実施等、必要な援助を行うことを請負事業主に求めているのです。
◆要因は「市場環境や技術構造の変化」
 ものづくりの人材に対して、今なぜこのようなキャリアパスや職業能力の評価等が求められるのかという点について、雑誌※3)の特別対談で、出井智将理事(社団法人日本生産技能労務協会)は、《発注者の現場で求められる仕事のレベルが相当高くなってきている》との発言に対し、佐藤博樹教授(東京大学社会科学研究所)は、《背景には市場環境や技術構造の変化があり、人材ビジネスが雇用する人材がものづくりの担い手として出現することになった》と答えています。続けて、《そういう仕事もしっかりこなせるような人材を育成することが大事になってきています》と。つまり、これまでは《一次的な要員の動員力の強さとか、コストの安さとか、そういう目に見える評価軸しかなかった(出井理事)》ので、《メーカーが、人材ビジネスの側がちゃんとこなせる力量を持っているかどうかをしっかり見極め、メーカー側にも人材ビジネスの選択責任が非常に大事(佐藤教授)》になってきたという趣旨です。
◆求められる「スキルのブラッシュアップ」
 このように人材ビジネスの果たすべき役割は大きくなりましたが、本来請負は、「ある仕事を全責任をもって引き受けて完成することに対して、注文者が報酬を支払う契約(広辞苑)」が基本ですから、高精度の仕事の完成に応えられる技術力等の醸成がより一層重要になってきたものと考えます。従って、前記のとおり、発注者による人材ビジネスの選択責任が重視されますので、請負労働者にはそれに呼応すべくスキルのブラッシュアップが求められることになります。これを極めることは、当ブログ記事(7/17日付):「『独立業務請負人』という働き方」で紹介のとおり、専門性の高い仕事を複数企業と請負契約を結んで活動する独立・自立した「独立業務請負人(IC:インディペンデント・コントラクター)」になることに繋がり、請負労働者の技能・技術等のレベルアップが、ひいては処遇向上や雇用の安定化に繋がるものと期待します。
※1)平成20年6月10日公表。「ものづくり基盤技術振興基本法(平成11年法律第2号)」第8条に基づく年次報告。
参考:※2)平成19年6月29日付厚生労働省職業安定局公表資料。※3)「ものづくりサービス プレ創刊号(労働新聞社編)」(株)労働新聞社。