「雇用創出プラン(福祉雇用)」はソーシャルビジネス

◆社会的課題を「ソーシャルビジネス」に
 少子高齢社会が進行する中、「町おこし・村おこし、環境、貧困問題といった社会的課題をビジネスとして事業性を確保しながら自ら解決しようとする活動(ソーシャルビジネス)」が、経済産業省支援の下に展開されています。これに関しては、2007年に発足の「ソーシャルビジネス研究会(座長:谷本寛治一橋大学大学院商学研究科教授)」で議論が重ねられ、昨年その報告書がとりまとめられました。当該研究会は、ソーシャルビジネスの定義として(1)社会性、(2)事業性、(3)革新性の要件を満たす主体を捉えています。簡単に言うと、社会的課題をビジネスとして継続的な事業活動を推進し、新たな社会的価値を創出することと換言できます。
◆希求されるのは“雇用創出”
 さて、わが国内は世界同時不況の渦中で、「2008年度第二次補正予算及び財源特例法」が衆議院本会議で成立(再可決3/4日)したところであり、政府の緊急雇用対策(1,600億円)等が進められることになりました。この年度末まで直前半年間の「非正規労働者削減人数」については、厚生労働省調査結果(第4回:2/18時点)で「15万7,806人」と発表(2/27)されましたが、より実態に即せば、業界団体(加盟120社)※1)のヒアリング結果数値「約40万人」であり、弊社では「約70万人」※2)に上るものと予測します。手前味噌になりますが、弊社は当ブログ記事(2/12日付):「雇用創出プラン(福祉雇用)の提言」において、医療及び介護に係る長期雇用創出プランや海外生産の内製化等の必要性を訴え、今まさに求められるのは“雇用創出”にほかありません。この点で当該「雇用創出プラン(福祉雇用)」はソーシャルビジネスそのものに相当するのではないかと考えます。
◆4分野で「先進的事例55件」を選定
 前述のとおり、この年度末をピークに「派遣切り」による大量の非正規労働失業者の存在は社会問題と化したので、この「雇用創出プラン(福祉雇用)」がソーシャルビジネスとして雇用対策の一翼を担うことになるものと考えます。そこで「ソーシャルビジネス」について詳しく見ると、次の4分野に分かれています。即ち、(a)街づくり・観光・農業体験等の分野で地域活性化のための人づくり・仕組みづくりに取り組むもの、(b)子育て支援・高齢者対策等の地域住民の抱える課題に取り組むもの、(c)環境・健康・就労等の分野で社会の仕組みづくりに貢献するもの、(d)企業家育成、創業・経営の支援に取り組むもの、となっています。すでに全国先進的事例が公募され、代表する取り組みとして現在「55件」が選定されました。選定された取り組みを分野別で見ると、前記(a)が25件(占率45.5%)で最も多く、同(b)が18件(同32.7%)と続きます。また、4分野の小分類では、「地域活性化・まちづくり」が13件(同23.6%)で最多です。因みに、地域別で見ると、全国9管轄別で多い順に、関東局管内(11都県):13件、中部局管内(5県):12件となっています。
◆「年商約2.5億円」と「月刊3万部発行」の成功事例
 先進的事例から2つの事例を挙げると、【1】前記(b)分野の「(株)いろどり:徳島県勝浦郡上勝町」は地域産業振興で貢献し、また、【2】前記(c)分野の「(有)ビッグイシュー日本:大阪市」は障害者や高齢者、ホームレス自立支援で貢献しています。前者の企業は、これまでTV番組で数回紹介されたことがありますのでご存知の方も多いと思いますが、当該企業が所在する上勝町は徳島県の南東寄りの山中上流に位置し、人口2,014人(住民基本台帳:08/3/31現在)の小さな町です。65歳以上の老年人口は992人(49.3%)とほぼ過半を占めており、直近20年間で人口は約30%減少しています。こうした地域環境下ですが、逆転の発想で高齢者農家(180戸、190人)を企業戦力とし、身近な葉っぱや草花を料亭やホテル・旅館で使用される料理の「つまもの」として出荷する事業は年商約2.5億円で、全国シェアが約8割に達しているのは注目に値します。他方、後者の企業は、すでに当ブログ記事※3)でご紹介しましたので、詳細は当該記事をご参照いただくこととし、要は、ホームレス販売員(現在までの販売登録者780余名)が1冊定価300円の雑誌を全国主要12都市の指定路上で販売し、毎号3万部以上の売上実績を上げているという内容です。
◆今こそ「雇用創出プラン(福祉雇用)」の実現を
 このように見てくると、弊社提言の「雇用創出プラン(福祉雇用)」は、まさに、前述の4分野における「(c)環境・健康・就労等の分野で社会の仕組みづくりに貢献するもの」に相当するソーシャルビジネスと言えます。単に「雇用のミスマッチ」解消のために非正規労働失業者を充当すればよいというのではなく、医療・福祉・介護分野に係る人材育成を中長期対策として取り組んでいくことが肝要であり、そのために地方自治体が各県立高校に介護科や福祉科等を創設して将来的な人材を育成していくことが望まれるのです。そして、喫緊の雇用対策としては海外生産の内製化を実現し、それに対して雇用助成金を給付して雇用確保を図ることが必要と考えます。
※1)日本生産技能労務協会(技能協)及び日本製造アウトソーシング協会(JMOA)が「自民党労働者派遣問題研究会(座長:長勢甚遠元法相)」で発表(1/27)。
※2)内訳は、当ブログ記事(1/28日付):「厚生労働省の失政(人災)」ご参照。
※3)当ブログ記事(08/8/6、09/1/13日付):「『ビッグイシュー日本版』を買った!」及び「人生をあきらめないホームレス販売員」ご参照。
参考:経済産業省公表資料。「非正規労働者の雇止め等の状況について(2月報告:速報2/18時点)」平成21年2月27日付厚生労働省職業安定局公表資料。「(有)ビッグイシュー日本」公表資料。当ブログ記事(2/12日付):「福祉雇用体制の構築を急げ」ご参照。