厚生労働大臣の発言こそ如何なものか???

◆厚労相の軽率発言
 新年早々の「厚生労働大臣の発言(1/5記者会見)」は、これまでの製造派遣の成立ちも判らず、全く安易な発言といわざるを得ません。「個人的には」と断った上とはいえ、厚労相がこの期に及んで、「製造業まで派遣労働を適用するのはいかがなものか」との個人的発言は、法改正の規制強化に依存する体質を露呈しており、看過できるものではありません。
◆世界競争に挑んできたのは「中小企業」
 そもそも日本の製造業は、5%の大手企業を95%の中小企業が支えて世界競争に挑んできた経緯があります。これまでわが国を牽引してきたといっても過言ではない中小企業には、(1)大手企業依存型の「構外外注(下請・協力工場)」と、(2)「構内外注(構内請負)」が存在していたのです。その歴史は古く、数十年間にわたりその形が日本の製造業を支えてきたことは否めない事実です。
◆土台を支えてきたのは「構内外注」
 しかし、バブル崩壊後の構造改革で、国際競争に勝つために国内大手企業は、付加価値の低い仕事を「構外外注」から海外生産へシフトしてきました。大手企業に100%依存型の「構外外注」は、物流や時間のコストが合理性を欠いたものとなり、他方、物流や時間に合理性のある「構内外注(構内請負)」が見直され、新しい国際競争力の手法を見出したのです。そして大手企業は、国際競争力に勝つために、この「構内外注」の比率を上げていったのです。これこそがまさに、バブル崩壊後の日本を支えてきた製造業の実態です。
◆「製造派遣解禁」が要因ではない
 ここで出てきた問題が、大手企業との「賃金格差」です。つまり、「構外外注」を活用していた当時は、仕事の場所が異なるので問題視されなかったのですが、「構内外注」の導入により同一の仕事場になった為に問題が出てきたのです。その後、製造派遣が解禁になり、「構内外注」が現在の「製造派遣」に変化していったのです。世間一般では、製造派遣を解禁したために正社員が削減され製造派遣が増加したと言われますが、厚労省の規制強化で「構内外注(構内請負)」の社員が「製造派遣」の社員に代わったに過ぎません。そして、「構内外注」にいた正社員までが派遣社員と呼ばれるようになり、メーカーの都合で簡単に「派遣切り」を招く対象となってしまったのです。決して、製造派遣解禁により派生したものでないことを明言しておきます。
◆「請負基準の明確化」が日本を救済する
 世界同時不況の渦中にいる今、政府や厚生労働省の成すべきことは「請負基準の明確化」です。「請負基準を明確化」し、請負しやすい労働環境を整備することです。前掲のとおり、「製造請負(構内請負)」は、言わば、「卓越した職人群団の集合体」とも換言でき、大手企業を支えてきた立派な産業であったことを忘れる訳にはいきません。請負体制が確立できれば、製造派遣の3年を1年以内にして規制強化しても、雇用問題への影響は小さいものと確信します。また、ここで請負を推進しなければ、大手企業は低コストを求め、更に海外生産へシフトしていかざるを得ません。わが国の雇用安定のためには、請負会社への「雇用責任ある請負化の推進」が必要なのです。昔から加工貿易を得手とした日本が、「ものづくり」を捨てることが果たしてできるでしょうか。今、「請負」こそが、この景気急減速で低迷する日本を救済してくれる唯一の方法に他ありません。