「地域ブランド」は何をもたらすか

◆国内外で「ブランド」悪用
 国内では、食品に係る産地偽装・不適切表示や消費期限日付改竄等の事件が相次ぎ、また、国外(とくに、中国・韓国)においては、「偽ブランド(無断商標申請)」による模倣店の出店等が問題になっています。産品等の仕入れ側は、「販売現場も騙される立場」と困惑しています。商品やサービスの名称の登録を通じて成立する「商標権は、知的財産権の一つ」であり、そこに蓄積された業務上の信用を保護することにあるのですが、冒頭に挙げた事例は、まさに、「ブランド」の悪用にほかありません。
◆「知的財産推進計画」を策定
 こうした情勢の中、わが国は、知的財産を核に産業の国際競争力を強化し、「知的財産立国」を実現するため、2003年7月に最初の「知的財産推進計画」を策定しました。当計画は、知的財産の創造、保護及び活用に関する推進計画で、政府・知的財産戦略本部(同年4月1日発足)が、少なくとも毎年1回改定しなければならない計画と規定(知的財産基本法第23条第1項及び第6項)されています。
◆2年前から導入された「地域団体商標制度」
 知的財産の保護強化に立脚し、「知的財産推進計画2004」に「地域ブランドの保護制度」が盛り込まれ、名称が一般化している、あるいは他地域での使用が既に定着している産品・製品等の競争力強化や地域の活性化、消費者保護等の観点から検討されました。そして、商標法※1)の改正により、2006年4月に、「地域団体商標制度(地域ブランド)」が導入されたという経緯です。
◆「地域ブランド」は保護される
 この「地域団体商標」は、組合自身またはその構成員が使用する商標であり(商標法第7条の2第1項)、登録を受けようとする商標に含まれる地域の名称は、商品または役務と密接な関連性を有すること(同法第7条の2第2項)等の要件を満たす必要があります。また、当該商標の対象となる指定商品(指定役務)は、「需要者の間に広く認識されたものでなくてはならず(同法第7条の2第1項)」、実際に商標を使用している商品(役務)であることが必要で、出願時に「周知性を証明する関係書類」※2)を提出することが望ましいとされています。尚、登録の権利期間は設定登録の日から10年で更新可能(商標法第19条第1項及び第2項)ですので、半永久的に権利を存続させることも可能です。
◆全国に普及する「地域ブランド」
 実際、「地域団体商標」の出願は、この2年間で800件以上に上り、385件が登録(2008年6月11日現在)されています。都道府県別登録内訳※3)の上位をみると、①京都府(50件)、②石川県(25件)、③兵庫県(23件)、④岐阜県(19件)、⑤東京都(14件)で、産品別では、①農水産一次産品146件(39.4%)、②工業製品142件(38.3%)で約8割を占め、③加工食品33件(8.9%)、④温泉22件(5.9%)と続きます。具体的な「地域ブランド」は、北海道の「十勝川西長いも」をはじめ、「静岡茶(静岡県)」、「大阪欄間(大阪府)」、「長崎カステラ(長崎県)」、「黒川温泉(熊本県)」、「沖縄そば(沖縄県)」等が挙げられます。因みに、食品偽装等の事件になった「一色産うなぎ(愛知県)」や「飛騨牛(岐阜県)」も登録されています。これら「お国自慢」の中には、隣接都道府県には知られていても、まだ全国的には意外と知られていない産品等もあり、興味を魅かれます。
◆「ブランド」は、品質保証してくれるもの
 このように、国内において「地域ブランド」は推進されていますが、本来、「ブランド」は、一定の品質を保証してくれるものであり、また、消費者が欲しい商品を見つけるのを容易にしてくれると共に、欲しくない商品を避けることにも役立つ証ですから、「地域ブランド」の登録によって「偽ブランド」に対抗し、消費者が安全・安心な生活を送ることができるよう、名実(知名度・品質)共に保護・振興されていくことが期待されます。
※1)商標法(昭和34年4月13日法律第127号。最終改正:平成20年4月18日法律第16号。施行予定:平成20年9月30日)。
※2)例:①仕切・納入・注文伝票、請求書、領収書又は商業帳簿、②広告宣伝が掲載された印刷物(新聞、雑誌、カタログ、チラシ等)、③一般紙、業界紙又は雑誌当の記事。
参考:「知的財産基本法(平成14年法律第122号)」内閣官房内閣広報室首相官邸資料。「知的財産推進計画2004(2004年5月27日)」知的財産戦略本部資料。※3)「地域団体商標2008(平成20年6月13日)」経済産業省特許庁公表資料。「地域団体商標登録制度のお知らせ」特許庁資料。「THE JUDICIAL WORLD 2008Vol.3」リーダーズノート(株)。