観光庁 「訪日外国人旅行者」の現状について

◆発足後1年を経過した「観光庁」

 民主党連立政権のもと、この度、政府の「観光立国推進本部(本部長:前原誠司国土交通相)」は初会合(12/9)を開きました。「観光庁Japan Tourism Agency」は国土交通省の外局で、設置(08/10/1)されてからすでに1年が経過しましたが、これは「国土交通省設置法等の一部を改正する法律(平成20年4月25日成立。平成20年5月2日法律第26号公布)」に基づくものです。詳細は、同庁発足前の当ブログ記事※1)をご参照ください。

◆10年後の目標は「訪日外国人旅行者数:2500万人」

 観光庁は、《訪日外国人旅行者の増加は、国際相互理解の増進のほか、我が国における旅行消費の拡大、関連産業の振興や雇用の拡大による地域の活性化といった大きな経済効果をもたらすもの》であるという前提に基づき、迎える2010年の訪日外国人旅行者数※2)の目標を「1,000万人」とし、官民一体で展開しているのが「ビジッド・ジャパン・キャンペーン」です。冒頭の推進本部はこれを推進するべく、来年を“強化年(ビジッド・ジャパン・イヤー)”と設定し、2013年は「1,500万人」、10年後の2019年には「2,500万人」の訪日外国人観光客を誘致するという目標を掲げています。因みに、この目標数値は、前政権時(観光立国推進戦略会議)の中期目標(2000万人:2020年)を上回るものとなっています。

◆訪日外国人旅行者数の6割はアジア3国

 では、実際の訪日外国人旅行者の受入数はどうかというと、2008年の訪日外国人旅行者数は「約835.1万人(835万835人)」で、前年維持(対前年比:0.0%)という結果でした。当該推進本部の3つのテーマのひとつに“中国からの観光客増加(中国人向け個人観光ビザ発行条件緩和)”が挙げられていますので、アジア地域の近隣3国(韓国・台湾・中国)に焦点を当ててみます。
 と言うのも、この3つの国でわが国の年間訪日外国人旅行者数の約6割(08年:57.2%)を占めており、昨年の実績人数は「約477万3,041人(08年)」でした。訪日旅行者人数は、(1)「韓国」、(2)「台湾」、(3)「中国」の順に多く、ターゲットの中国の伸率は6.2%(実績:約100万人)ですが、その絶対数は韓国の半分以下(42.0%)です。そこで、今年の推移を見ると、1月~10月までの推計値累計(日本政府観光局)では、中国の訪日旅行者数の対韓国占率は67.4%と昨年より占率は増加していますが、それは韓国の対前年伸率「▲(マイナス)40.7%」が影響しているものと推測します。さらに、中国の昨年の確定値累計(1月~10月:86万2,200人)と比較すると、今年10月までの累計数(同推計値)は昨年より約1万人(1万1,486人)少なく、対前年比率は横バイ(98.7%)という現状です。そして、この中国の現在の推計値は台湾(同推計値)より多いものの、1,900人と僅差なのです。

◆“日本人海外旅行者数”は訪日外国人旅行者数の約2倍

 “観光立国”としての目標には「訪日外国人旅行者数」を含めて「5つの目標」があり、そのうちのひとつに「日本人の海外旅行者数:2,000万人」が挙げられています。当該目標の達成状況はというと、昨年(08年)の日本人海外旅行者数は「1,599万人(達成率:80.0%)」で、訪日外国人旅行者数の達成率(83.5%:08年)と比較すると若干下回っていますが、絶対数は訪日外国人旅行者数の約2倍と遥かに上回っているのです。

◆GDP「9.6%」に上方修正した中国
 観光立国推進本部が「中国」にスポットを当てるのは、富裕層が多い現在の中国の経済情勢の好調に起因しているものと推測します。実際、中国の胡錦濤国家主席の最有力後継候補と目されている「習近平国家副主席」が日韓メディアとの記者会見(12/12)で、《今年の8%成長はほぼ間違いなく実現できる。中国経済の全体の勢いは回復し、良い方向に向かって発展している》と表明されたとおり、《中国国家統計局は、2008年の国内総生産(GDP)成長率を速報値の実質9.0%から9.6%に上方修正した(12/25)》とのマスコミ報道で明らかです。

◆改めて「日本観光」の魅力のアピールを
 しかしながら、今後、わが国が“真の観光立国”として地位向上を図っていくには、「ビザ発行条件の緩和」という当面対策のみならず、また、中国から近くて人気の高い「九州旅行」等に依存するだけでなく、広く「日本観光」の魅力を対外的により一層アピールしていくことが望まれます。一方で、この課題を幅広く論ずれば、“わが国内空港の在り方”にまで拡大して言及しなければならない問題と捉えることもできるのではないでしょうか。そしてこの度、政府は「観光立国」実現に向けて人心一新する狙いで、《観光庁長官の事実上更迭(2010/1/4日付退任)を承認(12/25閣議)した》ところです。今後の国土交通省の手腕に期待するばかりです。
※1)当ブログ記事(08/9/25日付)
 :『「観光立国」推進に期待すること』ご参照。
※2)訪日外国人旅行者:国籍に基づく法務省集計による外国人正規入国者数から日本に居住する外国人を除き、これに外国人一時上陸客等を加えた入国外国人旅行者のこと。
参考:観光庁公表資料。出典:「日本政府観光局(JNTO)」。日本経済新聞記事。