企業年金 廃止予定の「税制適格退職年金」の移行は急務!

◆経営再建問題となった“日航の企業年金”

 株式会社日本航空の経営再建問題のひとつに企業年金が取り上げられています。当該企業年金が経営課題とされてから3年以上とのことですが、現状では年金支給額は約25万円と高額です。経営再建のためにやむを得ず年金給付額の減額(現役:約5割、退職者:約3割の各々減額を想定)に迫られ、従業員は勿論のこと、受給者である退職者のOB・OG宛に基金より過日、郵便で通知されました。そして、前記の両者各々の3分の2以上の同意を得るため、日本航空の社長は主な地方拠点の説明会に全国行脚しているという経緯です。

◆廃止期限がある「税制適格退職年金」

 企業年金は4種類あり、冒頭に紹介の日本航空の企業年金はその内のひとつの厚生年金基金で、企業年金の契約内容は各企業によって種々異なります。そこで、ここでは当ブログ記事※1)でご案内のとおり、「税制適格退職年金」の廃止期限が刻々と迫って来ていますので、企業年金に注目が集まっている今、改めて「税制適格退職年金」の移行取り組みを急ぐべきと考えます。

◆移行対応が遅れている原因

 なぜならば、これまで「税制適格退職年金(以下、「適年」)」を契約されている企業におかれては、当該年金が「廃止となる2012年3月31日の期限」までに他の企業年金制度等へ移行しなければならないのです。廃止期限までにはまだ2年余りもあるとのんびり構えていてはいけません。当該「適年」の移行先としては、(a)「確定給付企業年金制度」、(b)「確定拠出年金制度(日本版401k)」、(c)「中小企業退職金共済制度(以下、中退共制度)」が認定されており、企業の福利厚生の一環である制度の為、現在の積立金や運用状況の説明のほか、今後のコスト面も含めて検討した上で制度移行の手続きとなるのですが、それには会社幹部による検討及び決断に十分な時間を要するからです。翻って、これがひいては移行対応の遅れている事由になっているのです。

◆運用リスクは自己責任の「新年金制度構想」

 廃止対象の「適年」の受け皿として、この度、《厚生労働省は「確定拠出年金制度(企業型)」を拡充する方針(2010年の通常国会に関連法案提出予定)》とのマスコミ報道(11/30)がありました。これは、《個人も掛け金を拠出できるようにするほか、積立期間の上限を現行の60歳から65歳に引き上げる》という内容です。但し、現行の個人型と同様、どのような商品で資産運用をするのかは自らの判断で決定して指図する必要があり、その運用リスクも自己責任となります。当該リスクを軽減するために運用商品構成の変更等が可能であることが前提となります。しかし、問題は加入者個人には投資知識の習得が必要であり、企業側は投資情報教育の実施が必要となるのですが、既存の個人型加入者を見ると、運用の逐次変更等には十分対応できていない現実があるのは否めません。従って、個人及び企業の各々には、このデメリットを克服すべく課題が残されていると言えます。
◆「中退共制度」への移行状況
 さて、移行先の一つの「中退共制度」(前掲)ですが、これは「独立行政法人勤労者退職金共済機構」が運営しています。これまで継続してきた適格年金契約の受益者等の持分額以内の全額移換が可能で、掛金納付月数の通算に係る額は、引渡金額の範囲内で最高の額とし、その額に応じた月数が通算されます。通算月数に充当できない資産については、残余の額として移換し、政令で定める利率(現行1%)を付して、退職金額に加えるという制度です。加入できる企業(共済契約者)は、例えば、一般業種(製造・建設業等)は常用従業員数※2)は300人以下(または、資本金・出資金3億円以下)等が規定されており、その名のとおり、中小企業を対象としています。当該制度に加入している企業数は「37万1,538(09/10末現在)」で、これまで「適年」から同制度への引継申出件数(02年/4月~09年/10月末現在)は「1万8,101事業所(従業員数:52万1,773人)」という現況です。
◆「移行による重複加入は不能」の中退共制度
 「中退共制度」のメリットは、①掛金の一部は国が助成。②制度運営費は国が負担。③掛金は税法上、損金または必要経費として全額非課税。④予定運用利回り年1.0%。⑤毎月の掛金は口座振替。⑥退職金は機構から直接退職者へ支払われる等が挙げられます。但し、「適年」から「中退共」への移行は、移行申出時点で「中退共」契約を締結している企業(事業所)は“移行不能”で、前記の新規加入助成は受けられませんので、前掲の(a)または(b)へ制度移行することを検討しなければならなくなる点はご留意ください。具体的な手続き対応は、自社の人事総務担当者が移行手続き窓口である金融機関等との相談・交渉に係って詳細情報を把握されていると思います。従って、会社経営幹部は自社の福利厚生制度を保持する為、たとえ中退共制度へ移行しなくても、廃止期限直前では柔軟な移行対応が困難となりますので、現在「適年」契約が有り“移行未了の企業”は、一刻も早く検討することが急務と考えます。
※1)当ブログ記事(08/10/16日付):『「適年」から「中退共制度」への移行について』。
※2)雇用期間の定めのない者、雇用期間が2ヶ月を超えて雇用される者。
参考:独立行政法人勤労者退職金共済機構公表資料。日本経済・日経産業各紙。