行政刷新会議 事業仕分け&労働者派遣事業雇用管理改善等推進について

◆公開実施された「事業仕分け」

 政府の行政刷新会議(議長:鳩山由紀夫首相)のWG(ワーキンググループ)による2010年度予算概算要求の無駄を洗い出す「事業仕分け」の作業(前半:11/11~17、後半:11/24~27、計9日間)が終了しました。国の無駄な事業を洗い出す検討プロセスの情報公開は意義がありますが、政権交代で与党になった民主党にとっては、何と言っても来年度の“財源捻出”の為、概算要求の見直し・見送り・縮減・廃止等に必死の様相を呈していたと感じました。

◆最初に“仕分けられた”のは民主党新人議員?

 振り返れば、鳩山首相は当会議発足時、多くの民主党新人議員を含む「事業仕分け人」に対して“必殺仕分け人”に徹するようにと話しましたが、仙谷由人行政担当相は小沢一郎幹事長の意向を受け(10/29)、当初の32人の仕分け人は7人まで大幅減少となりました。もともと新内閣発足時に「刷新会議メンバーは7人くらいが適当である」と仙谷行政担当相がTV特番で発言していましたので、当初の想定人数に落ち着いたのではないかと思います。これに対し、高村正彦元外相(自民党)は“事業が仕分けられる前に民主党新人議員が仕分けられた”とニュース報道で皮肉っていたのが印象に残っています。

◆予算要求縮減の「労働者派遣事業雇用管理改善等推進事業費」

 さて、「事業仕分け(前半)」の対象事業の中で注目したのは、「労働者派遣事業雇用管理改善等推進事業費(4億7,500万円)」です。当該事業は労働紛争を未然に防ぐため、民間の専門相談員に委嘱して派遣労働者や企業からの相談に応じる事業で、冒頭のWGによる事業仕分け(第2日目:11/12)の結果では、《予算要求は半額に縮減。ただし2010年度の廃止に向けて労使間で改めて協議をしてもらう》との判断となりました。当該事業費の取り扱いが最終的にどのような決定となるのかは、行政刷新会議及び国家戦略室の審議に委ねられ、その後、財務省の予算査定や閣僚審議を経て政府が閣議決定する段取りで進んでいます。

◆「派遣スタッフ雇用管理改善」を目的とした調査結果

 この「事業仕分け」対象とされた派遣事業に係る「雇用管理改善等推進」に関しては、最近の当ブログ記事※1)~※3)の傾向に従い、労働者派遣事業における派遣スタッフの雇用管理改善に向けた『調査報告書』※4)の調査研究結果に基づき、「派遣先」に焦点を当ててみます。
 当該調査は「派遣スタッフの雇用管理の改善に役立ててもらうこと」を目的としており、派遣先企業に次の2点(要点)を求めています。即ち、《(a)派遣会社任せにせず、派遣スタッフの雇用管理改善に努めるべきである。(b)派遣スタッフに直に接する指揮命令者や管理監督者が、派遣労働に関して正しい知識を持ち、適切な雇用管理を行うことが必要である》としています。結論としては、《派遣スタッフの指揮命令者・管理監督者の派遣労働についての理解や法的知識は十分とはいえない》ため、《派遣スタッフの雇用管理改善に関わる人たちへの教育研修の充実が求められる》という調査結果になっています。
◆「管理者の法的知識の認知度は低い」という現実
 では、その結論にある《法的知識は十分とはいえない》とは具体的にどのような内容を指すのかというと、派遣先企業管理者調査(前掲報告書※4)結果によると、「派遣労働に関する法的知識が低い(知っている割合:以下、%表示)」という内容で、低率順に次の3点です。つまり、第1に《一般事務など「自由化業務」の場合、派遣スタッフの受入期間の制限は、派遣スタッフ一人当たりではなく、同じ職場の同一業務について通算されること:29.7%》、第2に《一般事務など「自由化業務」の場合、派遣スタッフの受入れに際し、派遣先は派遣元に対して抵触日を通知する義務があること:32.8%》、第3に《加入条件を満たしていない場合を除いて、派遣スタッフを労働・社会保険に加入させてから派遣するように派遣会社に求めなくてはならないこと:39.4%》が挙げられます。
◆具体策に臨むこと
 これらは厚労省調査結果ですが、このように、派遣先が基本的な事項も知らない現実のもとで、果たして派遣スタッフの雇用管理を安心して任せられると言えるのでしょうか。前掲の第1点目については、派遣法の規定を知れば済むという問題のみならず、派遣先における日常の雇用管理において管理台帳等によりきちんと労務管理をすることが求められます。第2点目もそれに係る事項ですが、雇用管理を適正に行っていなければ「抵触日」の通知をすることはできません。第3点目は、派遣先は派遣元に責任を転嫁するのではなく、どのような労働条件下で派遣されるのかを事前把握した受け入れ態勢に臨まなければならないと思います。
◆派遣法改正は「派遣先責任の強化」でいいのか
 残念ながら、今臨時国会に「労働者派遣法改正案」は提出されませんでしたが、来年の通常国会に旧野党3党共同の「改正法案(廃案)」を基にした案が改めて提出されれば、審議不十分のまま同法改正になる可能性もあると強く懸念します。社民党は従前より「派遣先責任の強化」を主張してきましたので、日米合意の「普天間基地移設問題」で連立政権離脱をも示唆(12/3)した社民党福島瑞穂党首が、「労働者派遣法改正」についても同様に強硬姿勢を見せることになれば、より一層の“規制強化”は回避できなくなる可能性が出てこないとは限りません。現に、党首選で“無投票4選”を果たした福島党首は、「非正規労働者などの雇用問題」等を具体的に例示し、《“社民党だからこそ担える重要な役割がある”》と会見(12/4)で強調しました。規制強化の関連では、当ブログ記事(09/10/23日付)※2)をご参照ください。
 派遣法改正は、単に「派遣先責任の強化」や「製造派遣及び短期派遣の禁止」の是非に止どまることなく“派遣労働者の雇用安定”を目指した論議でなければ、わが国の経済産業と国民生活に与える損失はより一層拡大するものと考えます。前掲で紹介した“派遣先企業管理者”の現状を十分踏まえた上で、冒頭の「事業仕分け」結果の是非も再考いただいてはどうでしょうか。ただ、当該事業が実効性の低い委嘱相談事業に留まる内容であれば、削減も致し方ないのかもしれません。いずれにしても、こうした現状を鑑みると“派遣先責任者”に対する教育の必要性が高いことは否めませんが、単に「派遣先責任の強化」だけでは解決できないものがあるのではないかと考えます。
※1)当ブログ記事(09/09/10日付):『民主党 連立政権の3党合意で人材派遣業界は崩壊危機』。
※2)当ブログ記事(09/10/23日付):『連立政権で「派遣先責任は強化」されるのか』。
※3)当ブログ記事(09/11/04日付):『派遣先事業主 「派遣先責任の強化」を招く要因になるか』。
参考:※4)『労働者派遣事業における雇用管理改善推進事業調査報告書(平成21年3月)』:厚生労働省公表資料。日本経済新聞記事。
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