緊急避難としての「日本型ワークシェアリング」

◆目的は「雇用安定・創出」
 現下の雇用不安を払拭するため、「雇用安定・創出の実現に向けた政労使合意」が公表(3/23)されました。これは、《政労使の三者が一体となってこの難局に立ち向かうことが不可欠との共通認識に立》つことを前提に、次の5つの取組みに臨むことになりました。取組み事項は、(1)雇用維持の一層の推進、(2)職業訓練、職業紹介等の雇用のセーフティネットの拡充・強化、(3)就職困難者の訓練機関中の生活の安定確保、長期失業者の就職の実現、(4)雇用創出の実現、(5)政労使合意の周知徹底等です。要するに、わが国の労働現場の実態に即した形の所謂「日本型ワークシェアリング」の推進に合意し、雇用維持・確保を図るという趣旨です。
◆あくまでも「緊急避難」
 当ブログ記事(1/8日付):「『09年問題』の緊急避難措置が無いなら『雇用対策』を急げ」のタイトルのように、この世界同時不況に遭遇以来、当ブログで「緊急避難」という言葉を頻繁に使用してきた嫌いはあります。一般的に「緊急避難」と言えば、災害に遭遇した時に安全な場所へ緊急かつ一時的に避難することを言いますが、例えば、刑法の「緊急避難(同法第37条第1項)」から引用すると、《~(前略)~現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為~(同条)》の条文がそれに当たります。換言すれば、世界同時不況の危難を避けるべく、企業の減産態勢に伴って実施する残業削減や休業、教育訓練、出向等への対応コストで雇用維持を図るというのが「日本型ワークシェアリング(仕事の分かち合い)」であると解釈します。この促進のため、「残業削減雇用維持奨励金」の創設と解雇等を行わない事業主に対して助成率の上乗せ(制度拡充)が実施されることになりました。詳細は最寄り労働局またはハローワークでご確認ください。
◆「緊急避難」からスピード脱出を
 この「日本型ワークシェアリング」の取組み・推進は、個々の企業の労使間で納得と合意を得る必要がありますので、各企業の努力如何に委ねられていると言っても過言ではありません。厚労相は「労使の話し合いがまとまることを支援したい(3/24 AMぶら下がり記者会見)」と述べましたが、この世界同時不況の渦中、最終的にはいかに早く雇用不安や減産態勢を解消できるかが焦点です。当ブログ記事(08/12/22日付):「大量失業の非正規労働者を守れるか」で少し触れましたが、わが国の場合は、「フレキシキュリティ法(蘭:1998年Flexiculity)」のように、社会保障完備による派遣業規制を追及したものでない点から「日本型」と呼ばれる所以があるものと思います。
 雇用の緊急事態に臨み、卑近な例で恐縮ですが、過日開催されたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で主力選手の負傷で戦線離脱しなければならなくなった緊急事態に、わが国“侍ジャパン”監督は試合中に選手の入替え手続きに入り緊急招集しました。当然と言われればそれまでですが、代表監督はWBC日本代表選手の最終選考から外れた一選手が帰国後一人無心に打撃練習に臨んでいた真摯な姿勢を掌握し、勝機を逃がさない「スピード」を持って対処したのは重要ポイントではなかったかと思います。
 閑話休題、冒頭の「政労使合意」において、政府の役割は《雇用助成金の支給の迅速化、内容の拡充を図り、正規・非正規労働者を問わず、解雇等を行わず雇用維持を図るための支援などを早急に行う。》と記しています。所謂「派遣切り」の後、地方自治体臨時職員として再就職後、3月末に雇用期限が到来した新たな非正規労働失業者の存在も少なくないと推測します。また、今後順次「抵触日」到来を迎える非正規労働者の失職と相俟って、新年度に臨み、この雇用危機の「緊急避難」から一刻も早く脱出するために求められるのは、やはり「スピード」であると思います。
参考:平成21年3月23日及び30日付厚生労働省職業安定局公表資料。