「下請かけこみ寺」&下請法勧告状況について

◆「下請かけこみ寺」発足から1年
 所謂「下請法」※1)は下請取引の公正化及び下請事業者の保護を図ることを目的とし、親事業者による下請事業者に対する優越的地位の濫用行為を取り締まるために制定された特別法です。下請事業者の保護を迅速かつ効果的に図る為、「下請かけこみ寺(08年4月設置)」事業が全国規模で実施され、丁度1年を経過するところですが、その「相談取扱状況(速報)」を見ることにします。
◆全国中小企業の「相談窓口」
 その前に、「下請かけこみ寺」について少しおさらいしますと、「下請かけこみ寺」は中小企業庁からの委託事業で、本部(財団法人全国中小企業取引振興協会:全取協)及び全国各都道府県協会を合わせた全国計48ヶ所を「相談窓口」としています。特長は、(1)取引に関する様々な相談に親身に対応する、(2)「裁判外紛争解決手続(ADR)」の実施で簡易・迅速な紛争解決をする、(3)当該ガイドラインの普及啓発で「下請適正取引」を推進する、の3点が挙げられます。
◆迅速解決を図る「ADR」
 この(2)「ADR」とは「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(平成16年12月1日法律第151号)」※2)を指し、《訴訟手続きによらずに民事上の紛争の解決をしようとする紛争の当事者のため、公正な第三者が関与して、その解決を図る手続き(同法第1条)》に基づき、紛争の当事者が迅速な解決を図ることを目的としています。そして、民間事業者が行う和解仲介業務に関しては、一定の要件に適合すべく基準によって法務大臣の認証を受ける制度で、認証を受けた民間事業者の和解仲介業務に対して、時効の中断・訴訟手続きの中止等の法的効果が与えられます。
◆「製造委託」に係る勧告は倍増超
 閑話休題、「下請かけこみ寺相談取扱状況」※3)を見ると、相談件数合計は3,217件で、うち下請代金法関係は772件(対合計占率:24.0%)でした。合計件数は「下請かけこみ寺」発足時の約18.2倍に、また、下請代金法関係件数も同様に約16.4倍と、毎月増加してきました。一方、「下請法勧告一覧(平成20年度):公正取引委員会」を見ると、法改正以降の勧告件数は昨年タイ記録で最多の13件でした。内訳では、改正後の取引対象となった「役務提供委託」は昨年の8件から2件に減少し、「情報成果物作成委託」は変わらず1件でしたが、「製造委託」は昨年の5件から11件と倍増超となりました。また、所謂「買いたたき」事案も昨年の初勧告から3件目で倍増しました。
◆大半は「下請代金の減額」事案
 こうした「勧告(公正取引委員会による違反行為に対する行政指導による是正:同法第7条)」の内容を違反法条で見ると、大半が「減額の禁止(第4条第1項第3号)」※4)に係る事案です。因みに、前掲は2/5現在の勧告件数ですが、同法第3条第1項(書面の交付等)及び第5条(書類等の作成及び保存)に違反した場合は50万円以下の罰金に処せられます(同法第10条)。あくまでも、前掲「下請かけこみ寺」相談取扱状況は速報値で年度末までに増える可能性もありますが、「下請かけこみ寺」の推進活用に止どまることなく、親事業者の下請事業者に対する取引を公正化するには、下請委託契約の段階で取引条件等をきちんと書面により取り交わしておくことが何より肝要と思います。
※1)「下請代金支払遅延等防止法(昭和31年6月1日法律第120号)」。改正:平成17年7月26日法律第87号。平成18年5月1日施行。
※2)Alternative Dispute Resolutionの略。最終改正:平成18年6月2日法律第50号。但し、仲裁業務はADR法による認証の非対象。
※3)平成21年3月13日:中小企業庁事業環境部取引課。
※4)同法第4条第1項第3号:下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請代金の額を減ずること。
参考:中小企業庁公表資料。公正取引委員会公表資料。国民生活センター公表資料。