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2010.04.27

★アイスランドの火山噴火を契機にわが国内の「食品ロス」を再考した【第600号】

◆「エイヤフィヤトラヨークトル火山」の噴火

 わが国内においては某航空会社が再建途上にあり、会社再建に伴う“国内路線の全面撤退問題”で再び持ちきりとなっています。一方、世界の航空会社は、この度のアイスランド南部の「エイヤフィヤトラヨークトル火山(山頂高度:1,666m)」の噴火の影響で、ハブ空港(ヒースロー空港:ロンドン)が“史上初の全面閉鎖”の非常事態となる等、大きなダメージを受けています。

◆空港閉鎖は“航空機エンジン停止”回避のため

 実際、今回の火山噴火で“空港閉鎖”となったのは、《エンジンに吸い込まれた火山灰は燃焼室で融解し、その後排気口に移動して冷却して固まり、燃料ノズルや廃棄タービンに付着し目詰まりや破壊が生じる。これにより飛行機は推力を失》ってエンジンが停止してしまうのを回避した為と考えられています。

◆実は過去に“1年以上噴火が続いた火山”

 過日、英航空当局者は「飛行禁止解除」の判断を下し、当該ハブ空港は1週間ぶりに再開(日本時間4/21朝)されて空港機能が復活したのは幸いでしたが、予断を許さない状況と邪推しています。と言うのも、当該火山は、約1年1ヶ月間(1821/12~1823/1)にもわたって噴火が続いたという驚異的な過去記録を知ったからで、本当にこのまま収束に向かうのか否かは不透明と考えたからにほかありません。

◆年々開いている「アイスランドの地下プレート」

 東京大学地震研究所の公表資料によると、アイスランドの地勢は、《プレートが生まれるところ「海嶺」と、マントルに生成源があると考えられるマグマが上昇してくる場所「ホットスポット」との上に位置して》いるので、島の東側(ユーラシアプレート)と西側(北米プレート)が《年間10mm程度の速さで開いている》ということです。当該資料の図面を見ると、「大西洋中央海嶺」が当該火山にかかってアイスランドを横切っているのがわかります。即ち、“両プレートは、微動ながら反発し合って離れつつある状態”と換言できるのかもしれません。この点から、当該火山の今後の活動の行方は不透明と言わざるを得ないと考えた訳です。

◆火山噴火が継続すれば“世界的な日照不足問題”に
 すでに航空業界においては、約1,600億円の損害試算が出されており、貿易・流通業界等々、現時点で世界的に大きな損害が出ています。しかし、当該火山噴火で最も懸念されるのは、万一、このまま火山活動が収束せず、大量の火山灰が大気圏に漂うことになった場合には、《地上であっても、細かい火山灰が降ってくることによって、健康への被害が起こりうる》との見解(東京大学地震研究所)があり、世界各地で健康や農作物等々について世界的大被害が発生することになると推測できるからです。
 つまり、冒頭記載の内容は飛行機のエンジンが停止する場合を想定して空港閉鎖となった訳ですが、例えば、火山活動の活発化で大量の火山灰が浮遊した場合には、国際線の長距離飛行機の高度3万7千フィート(約11,300m)を超えて行くことになります。この「飛行高度約11km」というのは「対流圏」と「成層圏」の境界に相当し、紫外線を吸収するオゾン層が存在する「成層圏」から「中間圏」、「熱圏」を突破して大気圏外(外気圏)へ進んで行くことになり、“世界的な日照不足問題”を引き起こす要因になることが懸念されるからです。

◆日照不足の影響を受ける「農作物」
 どうやら、このままでは当ブログの話もどこか宇宙へ彷徨(さまよ)うことになりますし、日本人宇宙飛行士を乗せたスペースシャトル「ディスカバリー号」(STS-131/19A)が地球に無事帰還(日本時間4/20PM22時過ぎ)しましたので、話を地上に戻したいと思います。たとえ火山噴火が活発化して継続した場合でも、人間は食物を摂取していかなければ生きていけません。そこで唐突ながら、火山噴火によって被害を受ける「農作物」に焦点を当ててみたいと思います。

◆試験販売された“訳あり商品”
 現在の日本国内はデフレ経済下ですが、天候不順により“野菜価格は高騰”しています。この経済状況下で、流通大手の民間スーパーは、所謂“訳あり商品”として形が不ぞろいや傷物の「規格外野菜」を、通常価格より3~5割引で試験販売(都内及び名古屋市内)しました。但し、“訳あり商品”と言っても、“食品偽装”商品が論外であることは言うまでもありません。まさに時代は過去にタイムスリップしているようで、《主婦は“価格が安いのはうれしい”》と喜び、勿体無い精神の復活に繋がっているものと思います。流通業界関係者によると、これまで「規格外野菜」は主に加工食品等に利用してきたとのことですが、もし“野菜の外観だけが悪い”のを事由として食されず、廃棄等の扱いがなされていたとしたならば、本当に勿体無い話です。この「勿体無い」という精神が今後も持続されて行く社会となるならば、農作物は改めて“原点回帰”して行けるものと思います。

◆「食品ロス」は少ないと思われる“規格外野菜”
 「火山噴火」の話からドンドン飛躍してしまいますが、もう少しお付き合いください。「規格外野菜」が今以上に流通した場合、所謂「食品ロス」※1)はより一層少なくできるのではないかと推測します。と言うのも、前述のとおり、「規格外野菜」は形が不ぞろいや傷物であるにもかかわらず、逆に“不可食部分”の除去はより一層減少して行くのではないかと言えるほど、各家庭の台所では主婦が「野菜のヘタ」まで調理している現実がマスコミ報道されました。勿論、野菜価格の高騰が直接要因でしょうが、食物の有効利用は大切と思います。

◆「食品ロス」の最大要因は“過剰除去”
 そこで、わが国の近年の「食品ロス」の現状※2)を見ると、平成19年度の世帯における食品ロス率は「3.8%」で、前年度(3.7%)と同水準となっています。また、同ロス率の平成15年度(対比指数:100)比は、8割弱(同指数:79)まで減少してきているという傾向です。この「3.8%」の内訳は、(1)「過剰除去」、(2)「食べ残し」、(3)「直接廃棄」※3)という順で多く、因みに、平成15年度(100)比では「食べ残し(63)」が他の二者より減少率は顕著です。

◆“過剰除去”が最多なのは「野菜類」
 同統計結果から「食品ロス」が減少傾向の中、「食べ残し」も顕著に減少していることが解りました。そうすると、次は「食品ロス」で第1位の「過剰除去」をいかに抑えることができるかにかかってきます。そこで、食品類別で「過剰除去」としてのロス量では何が多いかを見ると、(1)「野菜類(43.2%)」、(2)「果実類(15.0%)」、(3)「魚介類(8.0%)」の順に多く、この生鮮食品3品で66.2%を占めていることがわかりました。即ち、「野菜類」の過剰除去をいかに抑制できるかにより、「食品ロス」の向上(減少)に繋がると考えることができるのではないでしょうか。つまり、“見た目が悪い”規格外野菜でも調理して食すには何ら影響は無く、むしろ、野菜価格高騰を背景として、今後、“規格野菜”においても「過剰除去」が抑制されて行くとするならば、「食品ロス」はより一層減少していくのではないかという期待感を抱いたという訳です。

◆「食品ロス」を再考させてくれた火山噴火
 アイスランドの火山噴火の動向は天に任せるしかありませんが、わが国も世界に冠たる“火山列島”ですから、“対岸の火事”とは言っていられません。最近は大陸からの“越境汚染(光化学スモッグ)”がマスコミで問題視されていますが、突然発生する自然災害の有無にかかわらず、また、「規格外野菜」特売の有無に左右されることなく、農作物とりわけ「野菜類」をはじめとする食材との付き合い方を改めて見直し、わが国の「食品ロス」をより一層減少させていくことが望ましいのではないかと考えます。この度の噴火で、「エイヤフィヤトラヨークトル火山」の火山名を初めて知ったという単純な喜びに止どまることなく、我々の日常の食生活を再考させてくれた“アイスランドの火山噴火”でした。
※1)「食品ロス」とは、純食料(可食部分の食料)のうち食品の廃棄や食べ残されたものをいう。「食品ロス率(%)」=「食品ロス量」÷「食品使用量」×100。
※2)『平成19年度食品ロス統計調査(世帯調査)結果の概要』平成20年9月2日付公表:農林水産省大臣官房統計部公表資料。
※3)賞味期限切れ等で、食事において料理・食品として提供・使用されずに廃棄したものをいう。
参考:東京大学地震研究所公表資料。独立行政法人宇宙航空研究開発機構公表資料。農林水産省大臣官房統計部公表資料。