★「大学評価」で淘汰される“法科大学院”

◆初の「大学評価」反映を受ける国立大学

 過日、文部科学省は、国立大学法人における研究や教育内容等に基づく「評価」を公表(3/25)しました。当該「評価」に基づき、2004年度に法人化された各国立大学の10年度以降の「運営費交付金」に反映されるようですから、今後の大学運営に大きな影響を与え、大学間格差が生じてくるものと思われます。

◆「アフターケア」で問題視される“法科大学院”

 ところで、冒頭の国立大学法人の「評価」とは別に、今、高度な専門的知識を修得すべく教育現場である“法科大学院の在り方”が問われています。と言うのは、「法科大学院」はその設置者を問わず、「法科大学院の在り方」について「大学設置分科会法科大学院特別審査会(文部科学省):(a)」が付託され、『設置計画履行状況等調査(アフターケア)』の実施結果に基づいて「評価」しているからです。当該調査は、各法科大学院から報告を求めると共に、《書面、面接又は実地による調査》が行われています。
 この『アフターケア』を前提に「重点校」等の指定が公表されました。即ち、この指定は、《法令の規定に違反していると認めるときは、学校教育法第15条に基づき、改善勧告や変更命令などの是正措置を講ずることができる》という法令下で発動された“不名誉な結果”です。当該「アフターケア」の目的はあくまでも設置計画の履行状況調査とされていますが、当該「評価」によれば、法科大学院設置の現状は、残念ながら、十分満たされた状況に無いと言えるのではないでしょうか。
 尚、法科大学院に対する「評価」は、前記の「特別審査会」の他、各大学の申請に基づいて「大学評価」を実施している「財団法人大学基準協会:(b)」が法科大学院の認証評価機関(07年/2月)に、また、「独立行政法人大学評価・学位授与機構:(c)」も認証評価機関となり、計3機関(前記a~c)が第三者評価を実施しています。蛇足ながら、「(独法)大学評価・学位授与機構」は、4月23日から開始予定の「事業仕分け第2弾(前半)」の対象となっています。

◆「改善を求められている法科大学院」は約34%

 実際、「評価」により指定を受けた法科大学院は、教育内容等の大幅改善を求められている「重点校」が14校、継続的改善努力を要するとされる「継続校」が11校で、合計25校も存在します。これは全国法科大学院数(74校)の33.8%を占めており、教育内容等以外に教員組織構成の面からも指摘されている法科大学院もあるのです。この事実は、法科大学院が教育機関として組織構成上不十分であることを露呈していると言えます。法曹資格を目指す“法科大学院自体に問題有り”では、当然ながら、大学院生の新規募集に悪影響を及ぼすことに直結し、未改善のままでは、法科大学院の存続自体が危ぶまれる要因となるのは遠くないと推測します。

◆「高度専門的資格取得者」も失業に陥る厳しい現実

 過日のマスコミ報道で、「公認会計士」資格試験合格者いわく、“試験合格よりも「就職」することの方が難関です”と嘆いている現実を目の当たりにしました。この厳しい現実は、公認会計士に限定されたことではなく、新たな弁護士資格取得者も同様の就職環境下に置かれています。こうしたわが国の雇用情勢下では、今後、高度な専門的資格取得者の挑戦意欲を減退させるのみならず、将来の展望も開けないのではないかと大いに懸念するところです。

◆3割を切った「司法試験合格率(修了者)」
 閑話休題、そもそも論を述べれば、法科大学院の設置は所謂「司法制度改革」の一環であり、『司法制度改革推進計画(02/3/19日付:閣議決定)』に基づき、《高度の専門的な法律知識、幅広い教養、豊かな人間性及び職業倫理を備えた多数の法曹の養成及び確保その他の司法制度を支える体制の充実強化を図る》ことを目指してきたのです。しかしながら、当該制度による司法試験合格率は「48.3%(06年)」から「27.6%(09年)」まで下降しており、《修了者の7割程度が法曹資格を得る》という当初計画からは大きく乖離してしまっているという現状なのです。

◆“当初計画の検証”に臨め
 前掲の『司法制度改革推進計画』では、当該制度改革を政府が講ずべき措置とするのみならず、《最高裁判所、日本弁護士連合会も含め全体として総合的かつ集中的に推進されることが重要である》として明記しています。しかしここに至って、過日、日本弁護士会連合会会長選において史上初の「再投票」が実施され、《司法試験合格者を1,500人程度に削減》すると主張する某弁護士が会長に選出されたので、今後の方向性に影響が出てくるものと推測します。
 所謂「法曹人口問題」解決を命題とする当該計画においては、《平成22年ころには司法試験の合格者数を年間3,000人程度とする》ことを目指してきた訳ですが、計画目標年が到来した今となっては、医療・福祉・介護等の高度専門分野における人材育成然りで、“泥縄”方式とならないよう臨んでいただきたいものです。また、単に数値目標の達成如何のみならず、《法曹人口の大幅な増加が急務》としてきた当初計画を改めて検証し、わが国の法曹界の長期展望に立脚し、《司法を支える人的基盤の充実》を図っていくことが急務であり、強く望まれるところと考えます。

◆淘汰される“法科大学院”
 こうした諸々の現状を踏まえ、では、“法科大学院は今後どのように生き残りを図っていけばよいのか”が問われます。某プロ野球チームの今年のスローガンではありませんが、法科大学院の在り方については“原点回帰”が必要で、次の2点が今後の課題と考えます。
 第1点目は、法科大学院の経営を当該「評価」に左右されないようしっかりと確立することです。例えば、民間金融機関における所謂「格付け」では「勝手格付け」まで存在しますが、全国の法科大学院にとって、当該「評価」はまさに「格付け」にほかありません。司法試験合格実績が重視される(中教審特別委員会)からといって、《幅広い見識を持つ法曹を養成する(大学評価・学位授与機構長)》という初志を忘れては、単に民間の受験予備校と何ら変わらないということです。「評価」は、あくまでも第三者が実施するものですから、それで経営が右往左往するようでは始まりません。法科大学院個々の“ビジョン確立”が肝要と思います。
 第2点目は、当然のことながら、法科大学院としての合格実績(合格率)は重要ですが、絶対数(合格者数)が過少では魅力を感じません。“質及び量”共に追求する努力がなされなければいけませんが、それ以前に、法科大学院としての組織構成が基準未達では、全く土俵にも上がれないということを肝に銘じて臨んでいただきたいものです。法科大学院のプライドにのみ固執していても、前掲のような教授構成員等未整備の法科大学院に魅力を感じないのは言うまでなく、今さらながら“乱立した”と言われても仕方ありません。
 従って、今まさに法科大学院は“淘汰に直面”している訳ですから、前項で述べたとおり、“当初計画の検証”に臨み、個々の法科大学院の今後の方向性をきちんと計画し、生き残りを図ることが急務と考えます。
参考:首相官邸・内閣府・文部科学省・厚生労働省公表資料。共同通信・読売・日本経済新聞各紙記事。