著作権譲渡と「著作権登録制度」について

◆著作権譲渡を巡る詐欺事件
 「著名な音楽プロデューサーが詐欺事件で逮捕」のニュースが報道されました。借金返済に窮したのが直接要因のようですが、現段階で詐欺容疑の内容は、音楽著作権の売却話を巡る二重譲渡(または三重譲渡)にあったようです。通常、作詞家や作曲家は、音楽著作権使用料の取り分を決めたうえで音楽出版社に譲渡し、その音楽出版社は、社団法人日本音楽著作権協会(JASPRAC:船村徹会長)等の著作権管理団体に権利を預けて使用料の徴収を委託しており、管理団体は利用者から使用料を徴収後、手数料を差し引いて音楽出版社に分配しています。
◆最初の被譲渡企業は文化庁に未登録
 ところが、著作権を最初に譲渡されていた音楽出版社は文化庁に未登録で、二重譲渡された2企業(イベント企画運営会社と音楽プロモーション会社)が、文化庁に各々複数曲を登録していたことが判明しました。その結果、JASRACが、「譲渡は音楽出版社が先なので権利者が確定したとは言えない」として、文化庁に登録した前掲の2企業に対抗したのです。当該事件については、現在、警察の捜査中につき、部外者による憶測はこの辺りに止どめておきます。
◆「著作人格権」は譲渡できない
 本来、①著作権は、知的財産権(知的所有権)に含まれる権利の一つで、知的財産権は、その他に、②産業財産権(工業所有権:特許権、実用新案権、意匠権、商標権)、③種苗法に分類されます。著作権が産業財産権と異なる点は、産業財産権は登録しなければ権利が発生しないのに対し、著作権は権利を得るための手続きは全く必要ないという点です。著作権法(昭和45年5月6日法律第48号)では、著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と規定(同法第2条第1項第1号)されており、「音楽の著作物(楽曲及び楽曲を伴う歌詞)」等、9項目の著作物が例示(同法第10条)されています。しかし、これらはあくまでも例示であり、限定されるものではありません。
 つまり、著作物を創作すると、「著作者人格権」と「著作財産権」が自動的に発生する(同法第17条)ので、行政庁への登録手続きは必要なく権利が発生するのです。但し、著作人格権は、著作者本人に専属し、他人に譲渡することができないと規定されています。当該詐欺事件では、著作権の二重譲渡が絡んでおり、当該容疑者が、著作人格権や著作隣接権(同法第89条)の専属と誤解していたか否かは定かではありません。
◆第三者対抗には登録要
 冒頭の詐欺事件に関し、文化庁への登録というのは「著作権登録制度」のことで、著作権関係の法律事実の公示や、著作権が移転した場合の取引の安全を確保する等のために設けられており、登録の結果、法律上一定の効果が生じることになるとしています。これは、著作権の移転または処分の制限等については、「登録しなければ、第三者に対抗することができない。」と規定(同法第77条)されていることに基づいています。実際、当該詐欺事件のように、音楽出版社が最初に著作権を譲渡されたにもかかわらず文化庁に登録せず、後で第三者が登録した場合には、当該音楽出版社が不利になるものと考えられます。
◆進行していない「著作権登録制度(文化庁)」
 JASRACに著作権が信託されている楽曲は約735万曲に達するのに対して、音楽のみに限定しない直近の年間総登録件数は約730件強(文化庁登録データ)で、ケタ違いの乖離が現存します。著作権各種登録に必要な登録費用は、「登録免許税法(昭和42年法律第35号)」で定められていますが、他種のそれと比して特に高額(税率)とも言えません。著作権登録制度の周知云々以前に、実際の楽曲数の多さ、登録手続きの煩雑さ、業界の慣習等の影響で登録が進行していないのではないかと推測します。今後、著作権登録制度による法的効力がどのように判断されるのか注視しますが、当該登録制度の一層の浸透で実効性の有る制度となることを期待するとともに、「知的財産立国」の実現を目指すならば、真に著作権が保護される体制の確立を切望します。
参考:文化庁長官官房著作権課公表資料。(社)著作権情報センター公表資料。(社)日本音楽著作権協会公表資料。日本経済・読売・朝日新聞等各紙記事。