「協会けんぽ」と健康保険組合の現状

◆今月発足した「協会けんぽ」
 「健康保険法(大正11年法律第70号)」に基づき、中小企業等で働く従業員(被保険者)やその家族(被扶養者者)が加入(計3629万4329人:2008年3月末現在)していた「政府管掌健康保険」は、社会保険庁の廃止に伴い、「全国健康保険協会(愛称:協会けんぽ)」が設立(10月1日付)されて、健康保険事業の運営はすべて引き継がれました。
◆サービス向上等は期待できるか
 当協会は、本部と全国47都道府県ごとに設けられた支部で構成され、支部単位で地域の実情を踏まえた健康保険事業(①保険運営の企画、②保険給付、③予防に係る保健事業)が実施されますが、組織変更後も健康保険の給付内容はこれまでと変更ありません。事業の一つである「②保険給付」に必要な財源は、厚生労働省から協会に交付金として交付されます。この組織変更により、「協会けんぽ」の常勤職員(約2,100名)は民間職員となった訳で、「サービスの向上」及び「事業の適正かつ効率的な実施」がどこまで徹底されるのかは、今後の展開次第と考えられます。
◆現状維持は厳しい試算
 と言うのは、実際これまで、高齢化による医療費増大と高齢者医療制度への拠出等により、積立金残高が、2008年度末には1800億円に減少する見通しだからです。現在、健康保険の保険料率は、9月30日までの政府管掌健康保険の保険料率(8.2%)が適用されていますが、「協会けんぽ」設立後1年以内に、都道府県ごとに、地域の医療費が反映された保険料率が設定されることになっています。厚生労働省の試算によれば、①保険料率を引き上げなかった場合は、2009年度の単年度収支は2700億円の赤字が見込まれ、積立金は約900億円のマイナスに陥る見通しで、②現状料率より0.3%引き上げれば、積立金は今年度並みの1800億円の水準を保てる計算で、いずれにしても厳しい状況に直面しています。但し、都道府県別の保険料率への移行にあたり、大幅に上昇する場合には、「激変緩和措置」が講じられることになっています。
◆解散する健康保険組合
 「協会けんぽ」以上に財政事情が大変なのは、大企業の従業員と家族が加入する「健康保険組合」です。全国の健康保険組合1518(2008年3月末時点)のうち、昨年度に経常赤字の組合数は680組合(占率44.8%、対前年35.5%増)でした。財政悪化の要因は、「協会けんぽ」同様、人口の高齢化による医療費の増加と、健保から前期高齢者医療制度への支援負担拠出金の増加です。実際、2008年度に入って解散した健康保険組合は13組合(被保険者数計:5万5,181人)に上っており、保険料率が「協会けんぽ」より高い設定のため、「協会けんぽ」への移行予備軍といえる健康保険組合が253(全体の16.7%)に達しています。そして、今年度の収支は、過去最大の約6300億円の経常赤字で、全体の9割の組合が赤字に陥ると予測(健康保険組合連合会)されています。少子高齢社会が進行する中、税制を含めた社会保障費負担のあり方の見直しが急務となっています。
参考:全国健康保険協会公表資料。日本経済新聞記事。