ILO条約 わが国が批准したのは『同一報酬条約』

◆『憲章』に謳われている“同一報酬の原則”

 『国際労働機関憲章』の前文には、《同一価値の労働に対する同一報酬の原則の承認》等の文言が盛り込まれており、労働条件の改善が急務であることを表明しています。そしてILOは、《「労働者の基本的権利(強制労働並びに児童労働の禁止、結社の自由、団結権及び団体交渉権、同一価値労働同一賃金、雇用差別の撤廃)」》に関する行動計画の採択(1995年)をはじめとして、『労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言とそのフォローアップ』を採択(1998年)したのです。

◆批准されたのは『同一報酬条約』

 わが国は、同一価値労働についての男女労働者に対する同一報酬に関する『同一報酬条約(ILO第100号条約:1951年)』をすでに批准(1967/8/24日付)しています。当該条約は、同一の価値の労働に対しては“性別による区別を行うことなく同等の報酬を与えなければならない”と決めたものです。しかしながら、『雇用及び職業についての差別待遇に関する条約(ILO第111条約:1958年)』※1)については、年功序列賃金を事由に批准していないのが現状です。

◆欧州及び米国における状況

 因みに、EU(欧州連合)はパートタイム労働指令(1997年)を定め、雇用形態を理由とした賃金格差を禁じており、職種と格付けに応じた時間比例の賃金制度が、産業別の労働協約によって整備されています。つまり、キリスト教の影響を受けて「不公正は正す」という正義感が共有されているようです。
 他方、米国では人種・女性・年齢差別等に対する雇用平等法制が発達していますが、「契約の自由」を重んじる米国社会の特徴に起因して均等待遇は法制化されていません。

◆「ILO第111号条約」の締結国数は168

 前掲の所謂『差別待遇[雇用及び職業]条約』の締約国数は「168(08/11/1現在)」に上りますが、わが国の直近の未批准事由としては、《百十一号条約は雇用及び職業に関する広範な差別、性に加えて人種、皮膚の色、宗教、政治的見解などに基づく差別を含む、これを除去するための措置を求めるというふうになっておりますけれども、日本でこういう国内法がないということで、今その国内法制との整合性の確保というのが常に国際条約の批准の条件になりますから、そこが今一つ引っかかっているという点ではあります。(前舛添厚労相国会答弁:08/5/20)》とされています。果たして、日本国民はどのようにこの問題を捉えるのでしょうか。国内法制との整合性の前に、諸外国とは環境を異にする日本の労働市場の現状を踏まえ、わが国の今後の対応に期待するところです。
※1)《締約国が国内の市場及び慣行に適した方法により、雇用、職業訓練、及び職業に従事することにおける性、人種、宗教、政治的見解、社会的出身等による差別待遇を除去するための、機会及び待遇の均等を促進する方針を明らかにし、それに従うことを定める。》
参考:ILO(国際労働機関)駐日事務所公表資料。国立国会図書館調査及び立法考査局(2009年3月)公表資料。