外国人労働者就労の受入体制整備を

◆雇用は年内「過剰気味」超で推移

 昨秋勃発した世界同時不況の直撃後、わが国内においてはコスト削減を名目に“派遣切り(非正規切り)”が進行したのは、皆様ご承知のとおりです。現在は、減産緩和から量産体制への移行に併せて稼動率向上も図られ、《個人消費は、このところ持ち直しの動きがみられる(月例経済報告:平成21年9月)》※1)と、8月と同様の景気基調判断となりました。
 所謂“派遣切り”は「年越し派遣村」の閉村・解散(6/28)で終焉しましたが、「法人企業景気予測調査」※2)結果(当ブログ記事:6/29日付ご参照)を見る限りでは、大・中堅・中小企業全産業における《雇用面の年内見通し(12月末)は、いずれも「過剰気味」超で推移するものとなって》おり、7月の完全失業率が「5.7%」と過去最高水準となったこと等を踏まえ、前掲の月例経済報告では《雇用情勢は、一段と厳しさを増している》との基調判断となりました。
 実際、過日公表された「非正規労働者の雇止め等の状況について(8月報告:速報09/8/18時点。8/28日付厚生労働省公表)」によれば、昨年10月から本年9月までに実施済み又は実施予定の非正規失業労働者※3)は全国で23万2,448人、うち派遣労働者は約60.3%(140,086人)を占めており、前回の同調査速報結果(09/7/21時点)と比較すると、総数は約1.4%増加(3,278人)しており、こうした現状は前掲の基調判断を裏付けているものと思います。

◆“強制送還”された日系人労働者

 とりわけ、世界同時不況で“派遣切り”に遭遇した日系人労働者は、(a)日本語能力の不足、(b)わが国の雇用慣行に不案内、(c)わが国における職務経験が十分でない、ということを事由に離職後の再就職が困難と判断され、現実的な選択肢の一つとして母国帰国による再就職を誘導されたのです。即ち、《再就職を断念し、帰国を決意した者に対し、同様の身分に基づく在留資格による再度の入国を行わないことを条件に一定額の帰国支援金を支給》され、表現が悪くて恐縮ですが、4月以降に母国へ“強制送還”されてしまったのです。帰国支援金の支給(実施主体:ハローワーク)に際し、対象者は本人及びその家族で、支給額は本人1人当たり30万円(扶養家族1人当たり20万円)、雇用保険受給期間中の者は一定額※4)が上積みされたという内容です。
 因みに、海外はホームレスの事例ですが、《ニューヨーク市はホームレスを減少させる為、2007年以降、移住可能(目的地に住む親類らが受け入れに同意することが条件)となったホームレスに目的地までの片道航空券などを無料で支給していたことに対して、ホームレス問題を他都市に押し付けているとの批判もある》とのマスコミ報道(7/31)があり、海外のホームレス増加の世情にも厳しい現実を垣間見る今日です。実際、米国の失業率(8月雇用統計9/4発表:米労働省)は「9.7%」に上昇し、10%目前と悪化しています。

◆求められる“高度外国人材”

 わが国の今年の「外国人労働者問題啓発月間(6月)」はすでに終わりましたが、当該啓発月間の趣旨を確認すると、《高度外国人材について、その就業を促進するとともに、適法に就労する外国人労働者について、雇用管理の改善等を促進するための施策を総合的に講ずる》とあります。また、《多様な価値観、経験、ノウハウ、技術を持った高度外国人材を積極的に受け入れることにより、新たなイノベーションを生み出して行くことが重要(高度人材受入推進会議)》としています。勿論、不法就労は防止・摘発されなければなりませんが、押しなべて“わが国は高度外国人材が欲しい”という意思表示と理解しました。

◆「実効性のある研修制度」の整備・実施を

 《わが国の全人口に占める生産年齢人口(15歳~64歳)の割合は「64.25%」で、1994年の調査開始以来、毎年減少している》※5)という現状にあり、当ブログ記事※6)にも記載のとおり、少子高齢社会の渦中にあるわが国は、生産年齢人口が約50年後(2055年)には半減(約4,595万人)すると予測されています。諸外国との「経済連携協定(EPA)」※7)も推進中ですが、今後は益々外国人労働者のマンパワー拡充のみならず、技術等も取り入れていくことが望ましいと考えられます。こうしたわが国の環境の下、前掲の日系人労働者の“強制送還”は緊急避難に相当したのかもしれませんが、日系人労働者を含めた外国人労働者との共存共栄を図っていくのであれば、現在進行しているEPAの研修制度はじめ、外国人労働者にとって、わが国経済社会の即戦力となり得る「実効性ある研修制度」の整備・実施が望まれます。これがひいては、“産業の空洞化”を食い止める一助になるものと考えます。
※1)『月例経済報告(平成21年9月)』平成21年9月8日付:内閣府公表資料。
※2)『第21回法人企業景気予測調査(平成21年4-6月期調査)について』平成21年6月22日付:内閣府・財務省報道発表資料。
※3)派遣又は請負契約の期間満了、中途解除による雇用調整及び有期契約の非正規労働者の期間満了、解雇による雇用調整に係る者。
※4)支給残日数30日以上の場合:10万円、同日数60日以上の場合:20万円。
※5)『住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数(平成21年3月31日現在)』平成21年8月11日付:総務省自治行政局市町村課公表資料。
※6)当ブログ記事(09/1/27日付)
 :「わが国における外国人労働力確保の必要性」ご参照。
※7)当ブログ記事(08/8/5日付)
 :「『EPA』に基づく外国人就労の受入態勢について」ご参照。
参考:平成21年3月31日付及び6月3日付:厚生労働省職業安定局公表資料。