派遣&請負の情報サイト

人材派遣や請負そして厚生労働省(労働局)の最新情報を発信しています。

メニューを開く
メニューを閉じる

2009.01.27

わが国における外国人労働力確保の必要性

◆国内の派遣・請負の外国人労働者は16万人超
 外国人雇用状況については、「雇用対策法及び地域雇用開発促進法の一部を改正する法律(平成19年法律第79号)」の成立によって厚生労働大臣(ハローワーク)への届出が義務化されました。直近データ(平成20年10月末時点)※1)によると、わが国で雇用されている外国人労働者数は48万6,398人で、このうち、労働者派遣・請負事業で就労する外国人労働者は16万3,196人(占率33.6%)となっています。
◆国籍別では「中国人」がトップ
 昨年当ブログ記事でご紹介した外国人雇用状況の数値は「速報値(平成20年6月末現在)」で、今回の前掲実数はその「確定数値」です。これを改めて確認すると、国籍別上位は、①中国43.3%、②ブラジル20.4%、③フィリピン8.3%の順に多く、都道府県別上位は、①東京都24.4%、②愛知県12.4%、③静岡県6.5%の順でした。ただ、今回の「世界同時不況」の直撃で、日本人同様、多くの外国人派遣労働者、とくに自動車関連産業でブラジル人が多いようですが、突然の「派遣切り」に遭遇して帰国の途に着いていますので、現在の実態は減少しているものと推測します。
◆「生産年齢人口」は約50年後に半減する
 ところで、現在のわが国総人口(平成21年1月1日現在概算値)※2)は1億2,765万人と前年横バイですが、今から46年後に当たる2055年のわが国の将来推計人口(出生及び死亡共に中位推計)※3)は8,993万人(対2009年比約70.6%)と推計されており、約3,772万人の人口減少が予測されています。その中身は、「生産年齢人口(15~64歳)」が2009年推計値対比で約56.3%(約4,595万人)と、ほぼ半減するという予測です。
◆50年間で1,000万人受入れる「移民立国」構想
 唐突に2055年と言っても実感が無いと思いますが、例えば、現在30歳代後半の第2次ベビーブーム層が80歳代に突入した頃と想像してください。前掲の推計人口の減少を踏まえ、経済成長の確保を目的として「移民立国」の政策提言(外国人材交流推進議員連盟会長:中川秀直元幹事長)が昨年メディア報道(08/6/20)されました。当該提言は「永住移民」を想定し、今後50年間で1千万人の移民を受け入れるという目標を掲げ、「移民基本法」、「民族差別禁止法」の制定や「移民庁」を創設し、「移民立国」への転換の必要性を強調して多文化共生により活性化を図るという構想です。
◆各国との「EPA」は進行中
 ただ50年後を待つまでもなく、少子高齢社会の只中にいる我々日本人にとって「生産年齢人口」の減少は懸念材料の一つであり、将来の労働力確保のためのみならず、諸外国との「経済連携協定(EPA)」※4)を進展していく上でも、外国人労働力確保は重要視せざるを得ないものと考えられます。わが国との「EPA」は主に東アジアを優先して展開されており、人の移動の面では、専門家・技術的職種での就労や短期滞在条件の緩和を図っています。とりわけ、「日インドネシアEPA」については、昨年8月はじめに看護師・介護福祉士候補者計208人の受入れが実施されましたが、「2年間で最大1,000名」の受入方針からは大幅に遅れています。また、「日フィリピンEPA(06年9月署名)」は昨年12月に発効したところです。隣国の韓国とは、李明博(イ・ミョンバク)大統領就任式後の日韓首脳会談で今後のシャトル外交を約し、中断していた「日韓EPA」締結交渉再開に向けた検討及び環境醸成のための実務協議が図られており、今後の展開が待たれます。
◆外国人労働者との共存共栄
 現在は前掲のインドネシア実習候補者が半年間の日本語研修が修了する時期を迎え、今後は来日前に雇用契約を締結した日本国内の各医療機関での就労が予定されています。就労しながら日本において(日本語の語学試験ではなく)日本語による看護師等国家試験合格を目指すのですが、不合格の場合は即帰国を強いられるという厳しい条件付です。現行の外国人就労については、「外国人研修・技能実習制度(93年)」に拠って実施されていますが、「研修・技能実習制度研究会(座長:今野浩一郎学習院大学教授)」で制度内容の見直し検討や、自民党国家戦略本部の外国人労働問題PT(座長:長勢甚遠元法相)による「外国人労働者短期就労制度」創設の提言(08/7/25)がなされています。今後は、より実効性ある研修制度の整備・実施に期待するとともに、わが国将来の生産年齢人口の減少に憂うことなく、国内企業が「世界同時不況」から一刻も早く脱却していくためにも、外国人労働者との共存共栄は肝要と考えます。
※4)特定の二国間又は複数国間で、域内の貿易・投資の自由化・円滑化を促進し、水際及び国内の規制の撤廃や各種経済制度の調和等、幅広い経済関係の強化を目的とする協定。
参考:※1)『外国人雇用状況の届出状況(平成20年10月末現在)について』平成21年1月16日:厚生労働省職業安定局公表資料。※2)「年齢(5歳階級)、男女別推計人口」総務省統計局公表資料。※3)「日本の将来推計人口(平成18年12月推計)」国立社会保障・人口問題研究所公表資料。「日本の経済連携協定(EPA)交渉― 現状と課題 ―」平成21年1月:外務省経済局公表資料。