「新規学卒者の採用内定取消し」問題について

◆大量の「採用内定取消し」
 政府は、「生活防衛対策」として総額23兆円の緊急対策を発表(12/12日付)したところですが、世界金融危機の直撃による国内実体経済の急減速で、全国で331人(11/25時点。厚労省調査)が、労働契約の一方的破棄という「採用内定取消し」を受け、大きな社会問題を醸し出しています。
◆ダメ押しの「説明会」
 メディア報道では、マンション分譲の大手企業にスポットが当てられていますが、内定取消し説明会は、「採用内定取消し通知」から約1ヶ月後に開催されましたが、出席者数は約6割に止どまり、補償金は当初より増額されました。「理不尽な決定で人生を狂わせてしまった」との当該企業の社長の弁のとおり、学生にとっては、社会へのスタート時点だけに本当に一大事であり、「会社が言い訳するだけの場で、これ以上は何も期待できない」と言う学生の本音には本当に同情の極みです。
◆「労働契約法」と判例法理は
 「労働契約法(平成19年12月5日法律第128号)」は今年3月1日に施行されており、同法成立により、労働基準法の解雇規定(第18条の2)は、労働契約法に移行されました。同法第16条では、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と規定していますが、罰則等はありません。しかし、裁判例(昭和54年7月20日判決:最高裁第二小法廷)によれば、「採用内定通知のほかには労働契約締結のための特段の意思表示が予定されていない場合、企業からの採用内定通知は労働者からの労働契約の申込みに対する承諾であり、誓約書の提出と相俟って、就労の始期を定めた解約権を留保した労働契約が成立したと解する」と示しています。従って、前掲の「採用内定」は、労働契約が成立したものと解することができ、「内定取消し」は解雇に相当することになります。但し、同判例は、その取消事由について、「採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であ」った場合、「社会通念上相当として是認することができるものに限られる」としています。
◆「整理解雇4要件」に対する適否を
 雇用調整のための整理解雇については、前記と同年、東京高裁判例(昭和54年10月29日)により、以下の4要件が必要とされています。即ち、①人員削減の必要性(特定の事業部門の閉鎖の必要性)、②人員削減の手段として整理解雇を選択することの必要性(解雇回避等のために配置転換等をする余地がないこと)、③解雇対象の選定の妥当性(選定基準が客観的、合理的であること)、④解雇手続きの妥当性(労使協議等を実施していること)です。従って、「採用内定取消し」はこの4要件に適合しているか否かが問われなければならないと考えます。
◆「雇用対策」の再考を
 当事者である学生の立場からすれば、まだ在学中であり、裁判で訴える余裕は無いものと推察します。いつから就活時期が早まったのか忘れましたが、このまま留年して入職時期繰下げに勝負を賭けるとしても1年間の学費納入が必要で、私立大学であればなおさらのこと、冒頭の補償金では不十分という現実があります。「派遣切り」に迫られる非正規労働者のように、「住居」は失わないものの、この少子社会で将来を担う有望な人材を疎かにしてしまうことは、企業財産(人財)の喪失にほかありません。学生の就活時期の検討をも含め、今後の雇用対策が再考されることを望みます。
★新規学卒者の採用内定取消し等に関する相談対応は、全国ハローワーク内の「特別相談窓口」へ。
参考:厚生労働省公表資料。「わかりやすい労働契約法(野川忍著)」(株)商事法務。朝日新聞記事。