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2008.06.02

インターンシップによる産学連携について

◆インターンシップ導入は、産学連携を支援
 「インターンintern」と聞いて、病院実習医学生を思い浮かべてしまうのは、いささか、旧い人間なのかもしれませんが、近年は、医学生に限定されず、①職業高校を含む高等学校、②高等専門学校、③短期大学、④大学院等の幅広い学生を対象として、企業等で一定期間研修生として働き、自分の将来に関連のある就業体験を行える制度(インターンシップ制:internship program)を指します。早期に職業観を刺激して学ぶ方向を明確にさせる効果があるとして、欧米で普及してきたようですが、わが国では、産業界の実態と学校教育とのズレを解消する手段として、「経済構造の変革と創造のための行動計画(平成9年5月策定)」に盛り込まれ、大学等でのインターンシップが導入されました。これは、新規産業を創出すべく「産学官連携」のうち、多様かつ実践的な人材育成による「産学連携」を支援する取組みで、平成10年度から総合的に推進されるようになったという経緯です。
◆企業の受入れは、平成13年末から
 その後、現在の日本経団連が「インターンシップ推進研究会」を設置(平成12年11月)し、また、社団法人雇用問題研究会(昭和23年8月発足)が「インターンシップ受入企業開拓事業」を厚生労働省職業安定局から受託したことにより、当事業が平成13年12月からスタートし、諸体制が講じられてきました。当初は、学生の青田買いに繋がる懸念もあり、学生の権利保護や学習機会の確保が課題となりましたが、現在は、受入企業側も、社会貢献という位置付けだけでなく、次世代を担う有為な人材育成という観点から、学生を受入れる姿勢に変化してきたようです。そして、平成15年からは「ハイパーキャンパスシステム(インターンシップ支援システム)」の導入や、各都道府県労働局から委託(平成18年)された全国各地の実施団体(推進協議会等)により、地域の特長を活かしたインターンシップの全国展開で推進・拡大されてきました※1)。
◆共同研究の実績は、主に民間企業
 そこで、文部科学省の1,113大学等を対象に実施した「平成18年度大学等における産学連携等実施状況調査について」※2)で、一例として、国公私立大学等における民間企業等との共同研究の実績をみると、件数は14,757件(対前年113%)、受入研究費総額は約368億円(対前年114%)と、いずれも前年より増加しています。相手先は民間企業が最も多く12,489件(85%)、次いで公益法人等1,534件(10%)で、共同研究件数のうち中小企業と行った件数は3,926件(27%)という結果でした。
◆実践教育の就業体験の場として
 しかし、現実の課題として、①インターンシップの学生に対して、労働賃金の支払い有無を問題視するのではなく、単に無償の労働力提供として利用される場合がある点と、②個別の職場で労働災害が発生した場合の保障(及び補償)問題です。いずれも、一言で解決策を述べることはできませんが、因みに、アメリカでは、大学入学から職場体験させ、卒業するまでに技術を入社時に必要な水準までに引き上げる等、給料も支給された研究活動をバックアップしているので、日本の学生のように、アルバイトをすることなく、就業体験を積むことができる環境にあるのです。他方、わが国では、インターンシップの登録学校の約過半(必修・選択合計:47.0%)※1)が単位認定のプログラムを実施していることで、学生はこの就業機会を積極的に活用していますが、あくまでも、職場での実践的な教育としての就業体験にならなければ、無給奉仕に過ぎません。
 要は、学生側は、インターン参画することのみに意義を求めるだけでなく、事前研究のうえ目的を持った態勢で臨むことが、そして、企業側は、実践教育の実効性を考慮した態勢で受け入れていただくことが肝要に思います。また、万一の労働災害発生に備えた保障制度が充実されていなければ、安心して就業体験に臨むこともできません。少子高齢社会において、有為な学生の貴重な就業体験機会の提供を拡充していくためには、今後も、企業の受入れ態勢と保障(補償)制度を整備していく必要があるのではないかと考えられます。
※1)インターンシップ推進支援事務局公式サイトHP資料:平成18年度実績(対H16年度比):受入企業開拓数7,190件(147%)、参加学生数11,887名(151%)。登録企業の内訳で多いのは、①製造業(31.8%)、②サービス業(30.1%)。登録企業の従業員規模の内訳で多いのは、①30~99人(21.8%)、②100~299人(21.2%)。男子より女子学生の情報登録数が多く54.1%。大学3年生が圧倒的で78.7%。
※2)共同研究開発の経費が、当該企業等から大学等に対し支弁されないものは除外されています。
参考:「『経済構造の変革と創造のための行動計画』の骨子(平成9年12月24日)」閣議決定資料。「やさしい日経経済用語辞典(日本経済新聞社編著)」日本経済新聞社。