労働時間の適正化に向けて

◆昨年度の是正金額は約272億円
 厚生労働省は、昨年度(2007年4月~2008年3月)に全国の労働基準監督署が割増賃金の支払について労働基準法違反として是正指導した事案のうち、100万円以上の「不払い残業代(割増賃金)」を支払った事案の状況を、次のとおり公表しました。その内容は、①是正企業数は1,728企業(対前年102.9%)で過去最多。②是正金額は272億4,261万円(対前年120.0%)と過去最高で1社平均約1,576万円。③対象労働者数は17万9,543人(対前年98.3%)、1人平均約15万1,733円で、辛うじて対象労働者数のみ前年度より減少しているという結果でした。
◆職場風土の改革がネック
 冒頭に記したとおり、そもそも賃金不払残業は労働基準法違反で、「労働時間の適正な把握のために使用者が構ずべき措置に関する基準(平成13年4月6日付基発第339号)」の策定で、使用者に労働時間を管理する責務があることを明示すると共に、労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置等も明らかにされています。しかしながら、長時間労働や賃金不払い残業解消には、労使による主体的な取組みが必要であることから、「賃金不払残業総合対策要綱(通称:サービス残業総合対策要綱)」及び「賃金不払残業の解消を図るために講ずべき措置等に関する指針」が策定(平成15年5月23日付)されており、その解消のために講ずべき事項が示されています。後者の「指針」では、労使が取り組むべき事項として、(1)労働時間適正把握基準の遵守、(2)職場風土の改革、(3)適正に労働時間の管理を行うためのシステムの整備、(4)労働時間を適正に把握するための責任体制の明確化とチェック体制の整備が挙げられています。とくに、(2)職場風土の改革については、労使双方の意識が反映されている場合が多いという点に問題があると考えられることから、①経営トップ自らによる決意表明や社内巡視等による実態の把握、②労使合意による賃金不払残業撲滅の宣言、③企業内または労働組合内での教育に対する取組みを行うことが望ましいとしています。
◆11月は労働時間適正化キャンペーン月間
 こうした指針等が策定されているにもかかわらず、昨年度の是正結果は最悪となっていることから、迎える11月1日から、“労使がともに協力しあい、長時間労働を抑制しよう!”をスローガンに、「労働時間適正化キャンペーン(1ヶ月間)」※1)が実施されます。キャンペーンの重点事項は、(1)時間外労働協定の適正化等による時間外・休日労働の削減、(2)労働者の健康管理に係る措置の徹底、(3)労働時間の適正な把握の徹底です。
◆長時間労働者に医師面接制度を適用
 前掲(2)に関しては、「時間外・休日労働時間※2)が1月当たり100時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる者(申出による)」が医師による面接指導の対象となる労働者に該当し、常時50人未満の労働者を使用する事業場も、長時間労働者への医師による面接指導制度が適用(2008年4月より)されていますので留意してください。「過労死」や「うつ病による自殺」が社会問題化する中、職場風土による長時間労働は労働者一人で改革できませんので、例えば、週1日「早帰り日(定時退社)」を設定したり、業務分担の工夫を図る等、会社挙げてより具体的な対策を講じていくことが肝要と考えられます。
※1)全国一斉「労働時間相談ダイヤル(無料):0120-897-713(ハヤクナクソウ長い残業)」の実施(11/22予定)。
※2)休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間のこと。
参考:厚生労働省労働基準局公表資料。日経産業新聞記事。