「適年」から「中退共制度」への移行について

◆適年は2012年3月末廃止
 企業年金の一つである「税制適格退職年金制度(所謂「適年」)」は、積立にかかる拠出金の全額を税務上、損金参入できるという節税対策の金融商品として、中小企業を中心に普及してきたという経緯があります。しかし、バブル崩壊後の資産運用の悪化から、企業が給付を切り下げしたこと等と相俟って、加入者である従業員の受給権保護が不十分であるとして、2012年3月末で廃止されることになっています。
◆遅々として進まない移行
 適格退職年金制度を契約している企業は、すでに廃止期限を承知しており、他の企業年金制度である①「確定給付企業年金制度」への移行や、②「確定拠出年金制度(日本版401k)」、あるいは、移行しない場合は、加入者である従業員に分配金を払う等して解散するかの選択に迫られているのです。但し、移行には、財政チェックの強化(前記①の場合)や、積立不足の解消(前記②の場合)という条件が伴うので移行には慎重になります。とくに、中小企業では、移行手続きが簡単な「中小企業退職金共済制度(中退共)」に移行する事例が多いのですが、既存の企業年金制度と併用して「中退共」に加入済の企業は、新たに重複(併用)して適格年金資産を「中退共」に移行することはできないのがネックの一つとなっています。
◆企業側の検討時間要
 いずれにしても、企業は移行に二の足を踏んでいるのが実態で、現在、適格年金で3万2,826社(2008年3月末)、約443万人の加入者が制度移行未了です。他方、各既契約を担当する金融機関は、制度移行の専属担当者を配置する等して移行提案を急いでいますが、企業の福利厚生の一環である制度の為、現在の積立金や運用状況の説明のほか、今後のコスト面も含め、会社幹部が十分な検討を実施したうえで制度移行の手続きとなる為、各企業に検討の時間が要されていることが、移行の遅れている事由にもなっています。
◆中退共制度は移行先の一つ
 そもそも、中退共制度は、「中小企業退職金共済法(昭和34年)」に基づき設けられた国の制度で、独立行政法人勤労者退職金共済機構が運営しています。これまで継続してきた適格年金契約の受益者等の持分額以内の全額移換が可能で、掛金納付月数の通算に係る額は、引渡金額の範囲内で最高の額とし、その額に応じた月数が通算されます。通算月数に充当できない資産については、残余の額として移換し、政令で定める利率(現行1%)を付して、退職金額に加えるという制度です。適格年金制度から当制度への移行は、平成14年4月から平成20年8月末現在までで、15,064事業所、従業員数43万635人となり、平成19年度に適年制度を解約した企業のうち、38.5%が中退共制度を選択しているという状況です。
◆「中退共」のメリットを再確認
 前掲の移行推移を鑑み、政府は移行推進策を強化する意向ですが、改めて「中退共制度」のメリットを見ると、①掛金の一部は国が助成。②制度運営費は国が負担。③掛金は税法上、損金または必要経費として全額非課税。④予定運用利回り年1.0%。⑤毎月の掛金は口座振替。⑥退職金は機構から直接退職者へ支払われる等が挙げられます。たとえ、中退共制度へ移行しなくても、廃止期限直前では、柔軟な移行対応が困難となりますので、各既契約企業におかれては、一刻も早く検討する必要があると考えます。
参考:独立行政法人勤労者退職金共済機構資料。