「個別労働紛争解決制度」の利用状況について

◆対象は個別労働紛争
 「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律(平成13年7月11日法律第112号)」が制定されてから7年が経過しました。当該法律の対象となる紛争は、労働条件その他労働関係に関する事項についての個々の労働者と事業主との間の紛争です。
◆窓口は「総合労働相談コーナー」
 具体的には、①解雇・雇止め、配置転換・出向、昇進・昇格、労働条件に係る差別的取扱い、労働条件の不利益変更等の労働条件に関する紛争、②セクシュアルハラスメント、いじめ等の就業環境に関する紛争、③労働契約の承継、競業避止特約等の労働契約に関する紛争、④募集・採用に関する差別的取扱いに関する紛争等、を含むすべての労働分野の個別の紛争が対象とされています。但し、労働組合と事業主の間の紛争や労働者と労働者の間の紛争等は対象となりません。紛争発展の未然防止や早期解決のため、「総合労働相談コーナー」が全国300ヵ所設置(各都道府県労働局総務部企画室等)され、総合労働相談員が配置されています。当ブログ記事※1)で、所謂「法テラス(日本司法支援センター)」をご紹介しましたが、「法テラス」は、総合法律支援法に基づいて設立された法務省所管の団体で、平成18年10月から業務を開始しており、前記の総合労働相談コーナーと連携しています。
◆利用状況は拡大の一途
 厚生労働省発表(平成18年5月25日付)資料で「個別労働紛争解決制度施行状況(平成17年度)」の概要を見ると、当該制度施行後の(a)「総合労働相談件数」は増加の一途を辿り、年間90万7,869件(対前年度10.2%増)に上っています。当該法が制定された平成13年度データは半年間分しかない為、翌年の平成14年度の総合労働相談件数を「100」として比較した場合、平成17年度は「145」まで増加しています。とくに、(b)「民事上の個別労働紛争相談件数:17万6,429件」は対前年度増加(10.2%増)は(a)と同率で、同様の比較をすると、「171」と大幅増加しています。総合労働相談コーナーを経て、紛争調整委員会※2)による(c)「斡旋申請受理件数:6,888件」も同様の比較で、「227」と倍増以上になっています。
◆相談内容は「解雇」「労働条件」が上位
 前掲(b)の具体的内訳(「その他」を除く)の占率上位5位をみると、①「解雇:26.1%」、②「その他の労働条件:19.6%」、③「労働条件の引下げ:14.0%」、④「いじめ・嫌がらせ:8.9%」、⑤「退職勧奨:7.2%」の順に多く、「都道府県労働局長による助言・指導」も同様の順位です。前掲(c)の内訳は、①「解雇:39.5%」、②「その他の労働条件:16.2%」、③「いじめ・嫌がらせ:10.5%」、④「労働条件の引下げ:9.9%」、⑤「退職勧奨:7.2%」と、「いじめ・嫌がらせ」が第3順位になっています。
◆処理期間は1ヶ月以内
 実際の「申出」及び「斡旋」処理に要した期間(同年度)は、各々1ヶ月以内(95.6%、63.5%)と、裁判に比較して手続きが迅速・簡便で、斡旋費用もかからないのは利点です。事業所規模は、10~49人が約30%強と最も多く、また、労働組合の無い事業所の労働者が70%を超えています。勿論、企業内の自主的解決が理想ですが、こうした身近な解決制度を活用する手立てもあります。
※1)当ビジネスブログ記事(7/22日付)「『法テラス』は周知されたのか」ご参照。
※2)学識経験者により組織された委員会で、都道府県労働局ごとに設置。被指名斡旋委員が、紛争解決に向けて斡旋を実施する。
参考:厚生労働省大臣官房地方課労働紛争処理業務室公表資料。