厚生労働省 労政審 労働者派遣制度「答申」について

◆昨年末に「答申」された

 民主党は今通常国会に「労働者派遣法改正案」を提出する予定で臨んでいますが、具体的な審議は、昨年末の労働政策審議会(会長:諏訪康雄法政大学大学院政策創造研究科教授)による長妻昭厚生労働大臣への『「今後の労働者派遣制度の在り方について」の答申について(労審発第564号:平成21年12月28日付)』に基づき、労政審の労働力需給制度部会(部会長:清家篤慶応義塾長)で行われています。
 「派遣法改正」の行方を探るため、当ブログに前記『答申』(抜粋)を掲載致しましたので、どうぞご参考にしてください。

◆『答申』(抜粋)の内容

Ⅰ.労働者派遣法の改正法案に盛り込むべき事項

1 登録型派遣の原則禁止
(1)派遣労働者の雇用の安定を図るため、常用雇用以外の労働者派遣を禁止することが適当である。
(2)ただし、雇用の安定等の観点から問題が少ない以下のものについては、禁止の例外とすることが適当である。
①専門26業務 ②産前産後休業・育児休業・介護休業取得者の代替要員派遣 ③高齢者派遣 ④紹介予定派遣
 なお、使用者代表委員から、暫定措置を講ずる場合に、経済状況や労働者のニーズも十分考慮に入れた上でその範囲や期間の在り方を検討すべきことに加え、そもそも登録型派遣は、短期・一時的な需給調整機能として有効に機能しており、これを原則として禁止することは労働市場に混乱をもたらすことから、妥当ではないとの意見があった。

2 製造業務派遣の原則禁止
(1)昨年来、問題が多く発生した製造業務への労働者派遣については、これを禁止することが適当である。
(2)ただし、雇用の安定性が比較的高い常用雇用の労働者派遣については、禁止の例外とすることが適当である。
 なお、使用者代表委員から、まずは真に問題がある分野を的確に見極める必要があるところ、製造業務全般への派遣を原則禁止することは、国際競争が激化する中にあって、生産拠点の海外移転や中小企業の受注機会減少を招きかねず、極めて甚大な影響があり、ものづくり基盤の喪失のみならず労働者の雇用機会の縮減に繋がることからも反対であるとの意見があった。

3 日雇い派遣の原則禁止
(1)雇用管理に欠ける携帯である日々又は2か月以内の期間を定めて雇用する労働者については、労働者派遣を禁止することが適当である。
(2)この場合、20年法案と同様に、日雇派遣が常態であり、かつ、労働者の保護に問題ない業務等について、政令によりポジティブリスト化して認めることが適当である。
(3)なお、雇用期間のみなし規定(2か月+1日)については、就業日など、みなされた労働契約の内容が不明確である等の問題があることから、設けないこととすることが適当である。

4 均衡待遇
 ○ 派遣労働者の賃金等の待遇の確保を図るため、派遣元は、派遣労働者と同種の業務に従事する派遣先の労働者との均衡を考慮するものとする旨の規定を設けることが適当である。

5 マージン率の情報公開
 ○ 20年法案※1)にあるマージン率等の情報公開に加え、派遣労働者が自己の労働条件を適切に把握するとともに、良質な派遣元事業主を選択する一助とするため、派遣元は、派遣労働者の雇入れ、派遣開始及び派遣料金改定の際に、派遣労働者に対して、一人当たりの派遣料金の額を明示しなければならないこととすることが適当である。

6 違法派遣の場合における直接雇用の促進
(1)違法派遣の場合、派遣労働者の希望を踏まえつつ雇用の安定が図られるよう、派遣先が、以下の違法派遣について違法であることを知りながら派遣労働者を受け入れている場合には、違法な状態が発生した時点において、派遣先が派遣労働者に対して、当該派遣労働者の派遣元における労働条件と同一の労働条件を内容とする労働契約を申し込んだものとみなす旨の規定を設けることが適当である。
 ①禁止業務への派遣受入れ ②無許可・無届の派遣元からの派遣受入れ ③期間制限を越えての派遣受入れ ④いわゆる偽装請負(労働者派遣法の義務を免れることを目的として、労働者派遣契約を締結せずに派遣労働者を受け入れること)の場合 ⑤1(登録型派遣の原則禁止)に違反して、常用雇用する労働者でない者を派遣労働者として受入れ
(2)(1)の規定の履行確保のため、通常の民事訴訟等に加え、(1)によりみなされた労働契約の申込みを派遣労働者が受諾したにもかかわらず、当該派遣労働者を就労させない派遣先に対する行政の勧告制度を設けることが適当である。
 なお、使用者代表委員から、仮に規定を設ける際には、派遣先の故意・重過失に起因する場合に限定した上で、違法性の要件を具体的かつ明確にする必要性があることに加え、そもそも雇用契約を申し込んだものとみなす旨の規定を設けることは、企業の採用の自由や、労働契約の合意原則を侵害することからも反対であるとの意見があった。

7 法律の名称・目的の変更
 ○ 法律の名称及び目的において「派遣労働者の保護」を明記することが適当である。

8 施行期日
 ○ 施行期日については、改正法の公布の日から6か月以内の政令で定める日とすることが適当である。ただし、1(登録型派遣の原則禁止)及び2(製造業務派遣の原則禁止)については、改正法の公布の日から3年以内の政令で定める日とすることが適当である。

9 暫定措置等
(1)1(登録型派遣の原則禁止)に関しては、禁止に当って派遣労働者等に与える影響が大きいため、その施行は段階的に行うべきであると考えられることから、暫定措置として、1(登録型派遣の原則禁止)の施行日から更に2年後までの間、比較的問題が少なく労働者のニーズもある業務への労働者派遣(具体的には政令で規定することとし、その内容については労働政策審議会で審議の上、決定)については、適用を猶予することが適当である。
(2)派遣元及び派遣先は、労働者派遣契約の中途解除に当って、民法の規定による賠償等派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置を講ずるものとすることが適当である。
(3)政府は、労働者派遣事業の禁止に伴い、派遣就業ができなくなる派遣労働者の雇用の安定や企業の人材確保を支援するため、公共職業安定所又は職業紹介事業者の行う職業紹介の充実等必要な措置を講ずるよう努めるものとすることが適当である。
 その際、とりわけ中小企業においては人材確保が困難であるという指摘があったことを踏まえ、職業照会事業等が中小企業の人材確保に適したものとなるよう、特に配慮すべきである。

【注】

※1)2008年11月に第170回臨時国会に提出した法案。
尚、『Ⅱ.その他の検討項目について』は、別日の当ブログ記事に掲載しますのでご了承ください。
参考:厚生労働省職業安定局公表資料。