日雇い派遣の原則禁止法案について(№1)

◆バイトができなくなる学生・主婦等
 「日雇い派遣の原則禁止」を前提に、厚生労働省は法改正の検討に入ったとマスコミ報道されました。福田首相が「社会保障国民会議」※1)で、「非正規労働者対策の一環として、偽装請負や違法な派遣への取締りを強化する」と共に、「派遣労働者を守る制度を空洞化させてはいけない」と指摘したのを受け、舛添厚生労働大臣は、「日雇い派遣はかなり厳しい形で見直すべきだ」と会見されました。法改正で、今後の日雇い派遣が全面禁止となると、空き時間を活用したい学生や主婦のアルバイトはできなくなり、また、給与だけでは生活が苦しく、やむなく副業するサラリーマン等ダブルワーカーの仕事まで奪われることになってしまうのです。
◆「バイト」と「日雇い」は異なる雇用形態
 所謂「ワーキングプア」が社会現象になった影響で、学生や主婦等と「日雇い派遣労働者」※2)を混同して捉えられていないでしょうか。学生や主婦は、自分の自由な空き時間を活用するためにアルバイトやスポット派遣等を利用している「平常雇用されていない人々」で、他方、日雇い派遣労働者は、「日々雇用される派遣労働者」ですから、同次元で考えるのは自ずと無理があるのではないでしょうか。
◆日雇い派遣労働者は2種類
 日雇い派遣労働者は、①同一企業から毎日派遣されている日雇い労働者で、月間15日以上勤務で日払い・週払い給与の常用雇用者と、②複数の企業にわたって日雇いされている派遣労働者に分かれますが、押しなべて、低賃金・社会保険未加入・交通費未支給等の劣悪な労働環境下にあります。従って、今後の日雇い派遣原則禁止について、職種を巡り議論されているようですが、対象職種の特定ではなく、日雇い派遣労働者という雇用形態に限定して検討されるべきと考えます。
◆失業手当受給には厳しい条件
 日雇い派遣労働者が失業手当を受給するには、(a)複数の派遣会社に登録し、職場を転々として不安定な雇用状態にあること、また、(b)ハローワークで求職している等の条件を満たし、指定ハローワークでの「失業認定」が必要です。しかし、実際には、同一企業から毎日派遣されている常用雇用者は、単一企業という点で条件(a)を満たせず、非該当になってしまうのです。たとえ、複数の企業にわたって日雇い派遣されている場合でも、「給付を受けようとする月の前月及び前々月」の2ヶ月間で最低26日以上の仕事をした証が必要で、「日雇労働被保険者手帳」に雇用保険印紙の貼付が合計26~31枚要るのを最低条件として、最大給付日数13日分に相当する「日雇労働求職給付金」支給の権利を得、同時に、「日雇特例被保険者(健康保険)」として給付も受けることができるのです。従って、日雇い派遣労働者にとっては、これら所定の日数分の就労を確保すること自体が現実的に困難であるため、厳しい条件になっていると言えます。
◆救済すべきは、日雇い派遣労働者
 と言うのは、日雇い派遣労働者にとって、常用雇用時の給料日までの約40日間分の生活費の確保こそ優先命題であり、「from hand to mouth(その日暮らし)」の生活を強いられているだけに死活問題です。ハローワークが担当する相談支援窓口※3)で、「生活支援」と「居住支援」の貸付金給付(要件有り)が開設されたところですが、あくまで貸付金なので返済義務が重く圧し掛かるだけです。「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と憲法第25条で保障されているとおり、それが現実のものとされるには、日雇い派遣労働者こそ、第一順位の救済対象ではないでしょうか。そして、日雇い派遣労働者が救済されるには、ある程度まとまった生活費が支給される等、雇用保険を利用した現実的な救済方法を検討することが喫緊の課題ではないかと考えられます。
※2)「日雇派遣指針」の対象となる日雇派遣労働者の範囲は、日々又は30日以内の期間を定めて派遣元事業主に雇用される者。30日以内の期間を定めた雇用契約を更新して通算30日を超えるような場合も対象。
※3)「就労支援」は、厚生労働省が「東京ホームレス就業支援事業推進協議会(通称:東京ジョブステーション)」に委託等して開設(東京・大阪・愛知)。他の地域は、各ハローワークが担当。その他、「生活支援」・「居住支援」有り。
参考:※1)社会保障国民会議:①本会議第5回会合平成20年6月6日配付資料。②分科会第5回会合平成20年6月4日配付資料。「日雇派遣労働者の方へ」厚生労働省HP資料。日本経済新聞2008年6月7日・14日付掲載記事。