非正規労働者の雇用確保態勢と「2009年問題」対応(№23)

◆世界金融危機という「津波」
 米国は「100年に一度の信用の津波」に見舞われているとは、アラン・グリーンスパン(Alan Greenspan)前FRB議長による米下院の監視・政府改革委員会公聴会での証言ですが、今や、わが国内の経済情勢を語る上で、「世界金融危機」が枕詞になってしまった感は否めません。わが国内企業では、とくに自動車メーカーを筆頭に、大幅な減産態勢による大量人員削減計画が公表され、非正規労働者は、本当に生活が脅かされる切実な問題に直面しており、今その「津波」の只中にいるのです。
◆大量離職が懸念される非正規労働者
 自動車販売は、今年度当初生産計画より約189万台(海外約100万台、国内約89万台)に上る急速な減産に突入しており、国内大手自動車メーカー3社でその約7割超を占めています。当ブログ記事(12/1日付)で記載しましたが、その皺寄せは、真っ先に非正規労働者に向けられており、派遣社員及び期間従業員の削減計画は約1万4,000人規模に膨らんでいるとのことです。また、渦中の飛び火は新卒内定者にまで及んでいるため、麻生首相の指示(①非正規労働者らの雇用の維持、②失業者の再就職支援、③新卒者への内定取消し問題への対応)により、与党で具体的な「新雇用対策」が検討されているところです。派遣社員や期間従業員等、非正規労働者の大量離職はこの年末を待たずにすでに発生しており、「3万人に上る(厚労省調査)」のは来年3月までの確定分のため、当ブログでは、約30~50万人に上るものと懸念しています。そして、新規学卒者の採用内定取消しも現在進行形のため、「再雇用支援策」が急務であることを当ブログ記事で主張した訳です。
◆「緊急雇用対策本部」が設置された
 こうした厳しい現状を受け、厚生労働省は、迅速かつ的確に非正規労働者の再就職支援等を実施すべく「緊急雇用対策本部」を設置(11/28)し、適切な対応を図る態勢に臨んでいます。とりわけ、労働者派遣契約の解除については、これまでの①「派遣元事業主が構ずべき措置に関する指針(平成11年労働省告示第137号)」及び②「派遣先が構ずべき措置に関する指針(平成11告示第138号)」に基づいて、派遣元事業主及び派遣先双方に対する指導が徹底されるのみならず、各都道府県労働局長宛に「通達」が発出されました。
◆雇用安定確保の「通達」発出
 当該「通達」は、「現下の厳しい雇用失業情勢を踏まえた労働者派遣契約の解除等に係る指導に当たっての労働者の雇用の安定の確保について(平成20年11月28日付:職発第1128002号)」です。指導内容は、(1)契約期間満了に伴い労働者派遣契約が更新されない事案については、派遣元事業主に対して当該派遣労働者の雇用の維持に努めるよう求めることを、また、(2)労働者派遣契約の契約期間満了前に契約を解除しようとする事案については、前掲の両指針(①・②)に基づき、派遣労働者の雇用の安定を図るための措置を講ずるよう指導を徹底する指示となっています。また、「偽装請負等に対する是正指導後の労働者の雇用状況(平成19年7月~平成20年3月:厚生労働省)」を見ると、(a)請負で働いていた労働者1万2,744人のうち443人(3.5%)が離職し、また、(b)派遣で働いていた労働者1,629人のうち137人(8.4%)が離職しているという現状があるため、是正指導に当たっての指導は、より一層徹底されるものと思われます。
◆「2009年問題」対応は併進
 当該「通達」で注視されるのは、現下の厳しい雇用失業情勢における雇用対策の一環とする今後の是正指導に当たっては、すでに閣議決定(11/4日付)されて現在与野党で協議中の「労働者派遣法改正案」の趣旨を踏まえ、(3)「派遣先または発注者に対して対象労働者の『直接雇用』を勧奨すること」としている点です。冒頭に記した今回の「津波」に伴う雇用対策が重要なのは勿論ですが、その「津波」を大義名分として、「2009年問題」対応が軽視される訳にはいきません。すでに当局は、「いわゆる『2009年問題』への対応について(平成20年9月26日付:通達)」で、事業主団体等に対する要請及び周知を明示していますので、一旦「直接雇用」しても“「飛び石」派遣ではコンプラ違反になる”ことを改めて肝に銘じて臨んでください。詳しくは、当ブログ記事(10/9日付)「厚労省『通達』に対する留意点について」をご参照ください。
参考:厚生労働省職業安定局公表資料。日本経済新聞記事。