「日雇い紹介システム」構築案(厚労省)はどうなったのか

◆中途解雇等の労働相談増
 米国大統領選投開票(11/4)の結果、第44代大統領にバラク・オバマ民主党上院議員が決まりました。「米国は1世紀に1度の最悪の金融危機のさなかにある」という大統領選勝利宣言のとおり、米国金融危機の影響を受け、日本国内の実体経済は急減速の只中です。株価は暴落・乱高下後もまだ不安定で、「金融機能強化法改正案」が衆院通過(11/6)したところです。
 こうした金融不安で企業が減産態勢やコスト削減に走る中、労働局の相談窓口では、「所謂『2009問題』対応の段階に至らず、雇い止めや中途解雇の相談が切実となっている(都道府県労働局)」とのことでした。確かに、厚生労働省HPでは、「派遣労働者等の皆様へ」と題して、「仕事を受けられなくなったので、新しい仕事をさがしたい」等の悩みのある人に対して、相談を総合的に受けてくれる労働局の相談窓口一覧が案内され、労働相談態勢に臨んでいます。
◆未だ幻の「日雇い紹介システム」
 さて、厚生労働省が作成した「労働者派遣法改正案」が閣議決定(11/4)されたところですが、衆議院解散・総選挙の時期等如何により、改正法成立までの道程はまだ不確定です。こうした状況の中、話題は少し遡及しますが、厚生労働省は、今夏、インターネットを通じて労働者に短期の仕事を紹介する「日雇い紹介システム」構築の方針を公表した(8/2)経緯がありました。メディア発表段階において、当該方針は「9月中に法案をまとめて秋の臨時国会に提出する意向」でしたが、現在のところ、その兆候は皆無です。
 この方針は、日雇い派遣原則禁止を盛り込んだ労働者派遣法改正を検討していた段階で打ち出され、ネットを通じて日雇いアルバイトを紹介するシステムを法律改正前に構築するという構想があったようです。即ち、厚労省検討の「日雇い紹介システム」は、PCや携帯電話のEメールアドレスを登録した人に日雇いアルバイトの仕事内容、処遇、連絡先等の求人情報を毎日メール送信する仕組みで、既存の「しごと情報ネット」を改良して運用するという、求人情報だけの提供です。従って、派遣の指示ではないため、当該システムによって、「企業が直接雇用するため雇用責任が明確になる」と考えられていたのです。
◆新事業モデルになるか「日々紹介」
 実際、違法派遣で事業停止及び事業改善命令を受けた派遣業界の大手企業は、すでに日雇い派遣事業から撤退を表明しており、「今後は、軽作業分野の長期派遣への移行を図るとともに、日雇い派遣に代わり推奨いただいている短期雇用の職業紹介事業等に業容の転換を図って(公表資料:某社お知らせ)」いく方針を明らかにしました。これに関し、某月刊専門誌は、「『やむを得ない代替案』『窮余の一策』に過ぎない」が、「日雇い派遣禁止法案が国会で成立した後の新しい事業モデルとして汎用性は高くなると予想される(当該誌編集主幹)」と評しているものの、また、同誌別頁では、「厚労省は『雇用主としての責任』を明確にするため、日々紹介については民間の職業紹介事業者を育成して対応する考えを明らかにしている(同誌編集部)」と記載しています。
 そこで、厚労省都道府県労働局にヒアリング(11/6)したところ、「『日雇い紹介システム』については、現在のところ何も明らかではなく、同省労働政策審議会や分科会または部会の段階で検討されているのではないか」との回答でした。所謂「日々紹介」を実行するとなると、即日手続きのすべてを完結する必要に迫られ、手続き処理の時間や人件費負担等の問題が出てくるものと推測します。当該システム構築案については、今回、このような段階のご報告にとどまり、また改めて考察したいと思います。
参考:厚生労働省職業安定局公表資料。厚生労働省都道府県労働局ヒアリング。MSN産経ニュース記事。