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2008.11.05

「労働者派遣法改正案要綱」について(№19)

◆閣議決定された「改正法律案」
 厚生労働省が労働政策審議会(菅野和夫会長:明治大学法科大学院教授)に諮問(10/24)した「労働者派遣法改正案要綱」※1)が答申(10/29)された段階で、「改正案要綱」に関するブログ記事を作成していたところ、厚労省はこの答申を受けて「改正法律案」を作成し、閣議決定(11/4日付)されました。この答申の段階において、労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会(清家篤部会長:慶応義塾大学商学部長)は、労働者代表委員から以下の意見が出たことを開示しています。それは、(a)派遣先労働者との均等待遇原則、(b)違法派遣の場合における派遣先との「直接雇用みなし規定」の導入が必要である点、(c)登録型派遣の在り方について労働者保護の視点から引き続き検討を行うべきである等です。
◆「法改正案要綱」の項目
 ご参考までに、敢えて当該要綱の項目を以下に列記します。(1)当該法律の一部改正。①一般労働者派遣事業の許可及び特定労働者派遣事業の開始の欠格事由の追加。②労働者派遣事業の業務の内容に係る情報提供義務の創設。③紹介予定派遣。④期間を定めないで雇用される労働者に係る特定を目的とする行為。⑤有期雇用派遣労働者等の雇用の安定等。⑥派遣労働者の職務の内容等を勘案した賃金の決定。⑦その他派遣労働者等の福祉の増進。⑧待遇に関する事項等の説明。⑨期間を定めないで雇用される労働者に係る派遣先の労働契約申込義務。⑩派遣先に対する措置。⑪一般労働者事業の許可取り消し及び特定労働者派遣事業の事業は意思命令に係る事由の追加。⑫関係派遣先への労働者派遣の制限。⑬日雇労働者についての労働者派遣の禁止。⑭離職した労働者についての労働者派遣の禁止。⑮その他所要の規定の整備を行う。(2)労働者災害補償保険法の一部改正。①派遣先の事業主等に対する報告、文書の提出又は出頭の命令。②派遣先の事業の事業場等への立入検査。③罰則その他所要の規定の整備を行うものとすること。(3)高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部改正。(4)その他。
◆労働者保護の視点から
 これまで当ブログ記事では、当該法改正案に盛り込まれている「日雇派遣原則禁止」や「インハウス派遣」等々について論じてきましたが、一般労働者派遣事業による「登録型派遣社員」については、派遣期間の終了と共に元の登録労働者に戻ると賃金は支給されず、雇用が不安定になるのは本来的に明らかな事実です。派遣社員が登録後、派遣労働契約(雇用契約)を締結するにあたり、就業条件等の明示(労派法第34条)は当然遵守されるべきものであり、交付が義務付けられていますが、ここで着目しなければならないのは、雇用契約上の遵守事項ではなく、そもそも登録型派遣事業の存在が、派遣労働者の雇用を安定させるべく雇用形態に適合するものであるか否かという点ではないかと考えます。「登録型派遣社員」は、期間の定めなく常時雇用されている「常用型派遣社員」が、仕事の有無にかかわらず賃金が支給される点と大きく異なる為、この観点から、審議会分科会部会で、登録型派遣の在り方について、労働者保護の視点から引き続き検討を行うべきである(冒頭:c)との意見が出されたのではないかと推測します。
※1)「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案要綱(厚生労働省発職第1024001号)」。
参考:厚生労働省職業安定局公表資料等。