「今後の労働者派遣制度の在り方」について(№7)

◆「今、日本を憂う」
 過日、「今、日本を憂う」をテーマの「元衆議院議員 野中広務講演会」に出席してきました。野中先生は、2003年10月の衆議院解散をもって、52年にわたる政治家生活に終止符を打たれ、現在は、講演活動や私立女子大学での政治学を中心とした研究・教育等に携わっておられます。講演終盤で、「福田首相は、親子代々真面目な人柄で大変苦労しておられるので、今後も皆様のご支援を賜るよう宜しくお願いします」という趣旨の短い言葉を聞いて参りました。「福田首相の辞任表明(9/1)」をTV報道で見たのは、その数日後でした。唐突に、当ブログで政治の話をしたい訳では毛頭ありません。突然の首相辞任表明で、野中先生の言葉を思い出したという有様です。講演テーマのとおり、まさに、「今、日本を憂う」です。
◆厚労省審議会部会での検討始まる
 当初予定では、臨時国会召集(9/12)で「労働者派遣法改正案」について議論に入るところでしたが、首相辞任により、臨時国会召集は、「自民党総裁選投開票(9/22)」以降に大幅延期となる形勢です。労働者派遣法改正案に係る方針が、労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会に提示されたところですが、論点は、①日雇い派遣について、②登録型派遣の常用化について、③派遣労働者の待遇の確保について、④雇用契約申込義務について、⑤労働力需給調整機能の強化について、⑥法令違反等に対処するための仕組みの強化について、⑦関係法制度の必要な整備について、の7項目です。労働者派遣制度見直しに当たっては、労働者派遣の大幅増加の背景から、労使双方の一定のニーズが顕在化したものとして事業規制強化は必要なものにとどめ、派遣労働者の保護と雇用の安定を充実させる方向で検討されるものと思われます。
◆派遣元の責任は重い
 派遣労働者の雇用形態別では、とくに、「日雇い派遣原則禁止改正案」について、当ブログで数回にわたり「提言」しましたのでご参照ください。今回の労働者派遣法改正で、「派遣労働者の保護と雇用の安定」の充実をめざすならば、派遣元及び派遣先の責任の在り方についても十分検討されるべきと思います。と言うのも、派遣労働者の雇用は、あくまで派遣元事業主が雇用者である地位に基づいて行うものですから、主に労働者保護に対する責任の所在は派遣元にあるという前提で推移してきたからです。しかし、派遣先での労働災害発生の場合等、現行の労災保険制度においては、被災者の保険給付に係る費用を派遣先から徴収できない点について、派遣先の法律上の災害防止責任が反映されるよう見直しを行うことを検討すべきではないかとのスタンスです。派遣元に対する責任だけでよいのかという観点から捉える必要があると思います。
◆派遣元・派遣先の責任を明確に
 派遣労働者が派遣という働き方を選択する理由として、「働きたい仕事内容を選べるから」、「仕事がすぐに見つかるから」という積極的事由と、「正社員として働きたいが、就職先が見つからなかった為」という消極的事由の2面が挙げられますが、選択の本意は他の所にあるかもしれません。派遣労働者の真意が「雇用の安定」にあるのなら、キャリアパスを考慮した適切な教育訓練等の実施こそが寄与するものであり、派遣労働者の能力向上に直結するのではないでしょうか。要は、派遣先と派遣元事業主の努力義務だけでは、派遣労働者への十分な保護があるとは言えません。派遣労働者に対する待遇を確保するためには、前掲の労働災害発生の場合も含め、派遣先及び派遣元事業主に対する「責任の明確化」が望まれます。
参考:「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会報告書(平成20年7月28日)」厚生労働省資料。