派遣先事業主 「派遣先責任の強化」を招く要因になるか

◆「派遣労働者の労災死傷者数」は前年減
 厚生労働省により、《昨年の派遣労働者の労働災害による休業4日以上の死傷者数は5,631人で、前年比254人(4.3%)減となった》と公表※1)されました。事業者に対しては、労働基準法施行規則第57条及び安全衛生法第100条第1項及び第3項に基づき、「労働者死傷病報告」を所轄の労働基準監督署長に提出しなければならないことが義務付けられているのは、皆様ご承知のとおりです。
派遣先による「労災かくし」なのか
 しかしながら、この「労働者死傷病報告」において、《派遣先と派遣元で食い違い、派遣先報告の死傷者数が派遣元より約2割少ないことが、同省の集計で分かった》とのマスコミ報道(9/27)がありました。冒頭に記載の死傷者数は「派遣元から提出された報告の集計数値」ですが、《派遣先からは4,574人で、1,057人少なかった》という経緯です。これはまさに派遣先による「労災かくし」にほかなく、当ブログ記事(08/5/28日付):『「労災かくし」は、コンプラ違反そのもの』でも取り上げてきた問題です。
◆近年の労災死亡者及び死傷者数は「製造業」がトップ
 その原因は、マスコミによると《派遣先の責任者が人事評価への影響や違法な働かせ方の発覚を恐れるなどして報告していない可能性が大きいと指摘(労基署元監督官ら)》したとの報道でした。前記の当ブログ記事では送検事例から「労災かくし」の事由を明記しましたが、これは派遣労働者に限定した場合ではない為、それらの事由が派遣労働者に即該当する訳ではありませんので誤解なきようご了解ください。
 「派遣労働者の労働災害発生状況(統計資料)」※1)により労災による死亡者数を業種別に見ると、平成18年まで建設業がトップでしたが、平成19年からはその不名誉な座は「製造業」に代わりました。これと同様、冒頭記載の休業4日以上の死傷者数の業種別は、平成16年から平成20年までの直近5年間わたり「製造業」トップは不動で、平成20年の割合は64.8%を占めているという現状です。
◆派遣先による過少報告は「派遣先責任の強化」に繋がる
 派遣先による過少報告の再発防止に向けて、《厚労省は、今後、報告様式を変えるなどして監視を強化する(マスコミ報道)》とのことですが、果たして、様式を変える程度で簡単にこの問題が解決できるのでしょうか。現状のままでは来年の通常国会に提出される「労働者派遣法改正案」において、“製造業の原則禁止”はもとより、当ブログ記事(09/10/23日付):『連立政権で「派遣先責任は強化」されるのか』に記載のとおり、派遣先責任を追及すべく規制強化が図られる可能性は高くなるものと推測します。今後の規制強化の有無を問わず、労働者保護を基点とするならば、労働者の安全衛生面についても「雇用の安定」と共に十分論議されなければならない重要課題と考えます。
※1)「平成20年における死亡災害・重大災害発生状況等について」H21年5月26日付:厚生労働省労働基準局安全衛生部公表資料。