厚生労働省による史上最大の“派遣切り”

◆厚生労働省の横暴か暴挙か・・
 厚生労働省が派遣会社の許可制度見直しを決めました(3/26)。労働者派遣法改正案が未成立の現段階で、何の議論も無しに人材派遣会社を廃業へ追い込む暴挙というほかありません。この制度見直しが今秋から実施されたなら、派遣労働者は雇用を奪取され、今後2年以内に約200万人以上の「派遣切り」が現実のものとなります。そして、人材派遣会社のほぼ90%は廃業に追いやられるという非常事態を招くことになるのです。
◆人材派遣会社を潰すつもりか
 この派遣会社に対する資産基準見直しは、まさに“厚生労働省による人材派遣会社潰し”と言わざるを得ません。当該制度見直し後の内容は、資産から負債を引いた額1拠点当たり1,000万円が2,000万円に変更、また、現預金は1拠点当たり800万円が1,500万円の保有要件となり、今年10月実施予定で「通達」改正予定とのことです。これは例えば、海外営業拠点保有の銀行に対する「自己資本比率(国際統一基準)8%以上」※1)を倍の16%に引き上げるのと同様に厳しい措置と言えます。この未曾有の金融危機の渦中、金融機関に対し基準引き上げを実施できるものではありません。
◆変更は“暴挙”にほかならない
 そもそも人材派遣事業は1拠点当たり1,000万円の資産要件が必要なのです。例えば、10拠点を保有しているならば1億円ということになります。そして3年目の更新※2)があります。従って、今年の10月以降に更新を迎える派遣会社にとっては、この3月時の決算数字が新基準の対象となります。厚労省は当該制度見直しを、この年度末に急遽変更するという“暴挙”に出たのです。
◆廃業に追い込まれる人材派遣会社
 人材派遣会社各社は、世界同時不況直撃に伴う「減産及び派遣切り」による売上大幅減に陥っており、現在の資産要件でも経営が非常に苦しいのが現状です。その直接要因は、派遣労働者退職時の有給等の支払いによる負担増があるからです。現基準に従って、例えば、10拠点で資産要件が2,000万円で決算の会社は、9拠点を閉鎖するか1.6億円の増資を実施する以外に方法は無いと言っても過言ではありません。一体この金融不況時に金融機関が1.6億円も緊急増資してくれるでしょうか。それが不可能なら、9拠点を閉鎖せざるを得ません。1拠点でもやむを得ないと安易に言われても、人材派遣業はエリア制限が存在するので、基本的には県内拠点を堅持する必要があります。こうした事由より、この金融不況時に基準が倍に変更されることは、ほぼ80%以上の人材派遣会社が拠点数を縮小するか廃業に追い込まれることに直結するのです。
◆人材派遣事業の“山体崩壊”に匹敵
 労働者派遣法改正案論議が中断する中、バブル崩壊以降、約400万人の雇用の受け皿として貢献してきた人材業界を厚生労働省の独断的一声で廃業に追い込み、今後の派遣労働者の生活を一体どう考えているのでしょうか。これまで叫んでいた「雇用の安定・維持・確保」は、単なるパフォーマンスだったのでしょうか。
※1)2007年3月末より「新自己資本比率規制(パーゼルⅡ)」が導入され、別途計算要。
※2)有効期間の更新後5年。